2025年3月は3/15(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:最も影響を受けた俳人と句、または最も好きな俳人と句、を教えてください。
結果はこちら
句会報:2025年3月「海原オンライン句会」
【高点句】(5点以上)
この駅舎ごと三月を置いてゆく 看做しみず
子宮てふあをき駅あり豆の花 石鎚優
春の海駅に着いたら電話して 井上べん
春という感じ煎餅割ったとき 平田薫
春霖の駅ノクターンの膨らみて 桂凜火
家紋といふ円を離れし春の水 三枝みずほ
歩くの大好き春のはじめが駅に似て 平田薫
ぶらんこを揺らすでもなく影ふたつ 看做しみず
まつろわぬ寝癖の主張春の駅 門司侑里
【参加者各一句】(高点句以外)
傘に顔隠す改札リラの冷え 和緒玲子
堅雪を掘ればきのうの日のかけら 石川まゆみ
春月のふわりとだれも降りぬ駅 榎本祐子
紫雲英のティアラ世界が大きかったころ 花舎薫
込み合うてきしきしと鳴く菠薐草 ながたに歌子
妻は汀子我は兜太の春炬燵 原洋一
ものの芽の和毛したがへ尼僧佇つ 男波弘志
ケネディを知つていますか猫の恋 大渕久幸
驛弁に欠番在りぬ御講凪 樹下修司
なごり雪生真面目そうに無人駅 木村寛伸
白蝶を放つ大地にいくさを許し 小西瞬夏
脚入れて抜けず俳句といふ春泥 塩野正春
待つことも大事な時間鳥帰る 田中信克
故郷の駅は小さし雪残る 矢野二十四
あれこれと無点を照らす兜太の忌 樽谷宗寛
退職の花束捨てて春兆す 夏谷胡桃
若いときにはもどりたくねぇ日向ぼこ 坂内まんさく
ヴィヴァルディのDNA持つか揚雲雀 姫
春の月改札前で握りし手 向井麻代
たこ焼きが好きなら蛸が降ってくる 葛城広光
寡黙なる人は駅舎に春の月 源汰
永き日の伝言板ですれ違う 小松敦
戒老録壁で黄ばんで暖かし さかいまゆみ
レタスサラダ何にもせぬといふ時間 坂川花蓮
山中の駅でひとりですいこまれ ふみ
男雛の視線少年期の兄のよう 増田暁子
手遊びの春猫柳の朝ぼらけ 野芝ありく
雪解けてぼんやり眺む窓の外 治子
券売機履歴吐き出す春の宵 満葉
◇
三月は初参加2名を含む36名。今回のテーマ詠お題は「駅」。最高点は9点「この駅舎ごと」、駅舎と切り離すことのできない思いを発つ、旅立ちや別れ、その潔さ。もう二度とここには戻ってこないだろうという予感。7点「子宮てふ」、命の始まる場所として、「あを」のイメージを各人各様に膨らませて読んでいる。平穏、爽やか、抑制、悲しみ、未熟さ、等。「豆の花」が明るい未来を思わせる。BlueではなくGreenの「あを」、鞘豌豆の鞘だと言う人も。「子宮」はあくまでもメタファーとして読むべきで、身体感覚を重ねると成立しないとの意見もあり。6点「春の海」、のんびりとした海沿いの町、友の来訪を待つ。たくらみのない表現にリアリティあり、ドラマを内包している。江ノ電の長谷駅だという人も。同「春という感じ」、個人的でストレートな表現が共感を創り出す。煎餅を割る音の軽快感が秋・冬・夏ではなくて、やっぱり春。5点「春霖の」、しっとりと水気を含んで膨らむ夜の想い。「ノクターン」の音も膨らみを感じる。外国の駅だと言う人も。同「家紋といふ」、閉じたサークル、しがらみから自由なった解放感。もう戻らない「春の水」の流れ。女系で受け継がれる「女紋」に触れる人も。同「歩くの大好き」、お出かけの始まる起点としての駅、春のはじめの明るくてうきうきした感じ。「トトロ」のファンタジーも重なる。同「ぶらんこを」、物語を感じさせる描写ではあるが、「ふたつ」より「ひとつ」がよかった、青春ドラマによくあるワンシーンだとの意見に対し、そのありがちなところが好きなのだ、と。同「まつろわぬ」、春の新人。朝の鏡の前の格闘もむなしく「まつろわぬ」。「まつろわぬ」とは言えそうで言えない。よく分かる、分かり過ぎるとも。(記:「海原」小松敦)