句会報:2024年3月「海原オンライン句会」

2024年3月は3/16(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:いつ、どこで俳句を作ることが多いですか? 結果はこちら


句会報:2024年3月「海原オンライン句会」

【高点句】(5点以上)

てのひらのくぼみにちやうどひなあられ 長谷歌子

遠足は弁当箱に棲む孤独 花舎薫

目貼剥ぐ硬き背中のネジゆるめ 坂川花蓮

それぞれに道それぞれに春の泥 安部拓朗

木魚打てど打てど蠢く欲の春 伊東リハじ

涅槃西風やわらかくなる靴の音 佐藤詠子

新宿の絆創膏を剥ぐ余寒 柳生正名

撃ち方やめい!しやぼん玉が飛んできた 矢野二十四

【参加者各一句】(高点句以外)

ふらここのひとりとなりて異星人 木村寛伸

亡き夫をヤツと呼ぶ友根深汁 黒済泰子

春風やメロンパン店タトゥー店 宮下由美

尻の下の新聞建国記念の日 大渕久幸

恥辱とは我がうすらひの割るる音 小野こうふう

声上げず投げ合う春の泥まみれ 桂凜火

シニヨンを春まつ指でゆるく結う さかいまゆみ

宅配のハザードランプ春の雪 菅原春み

春の土頭の中で作付けす 坂内まんさく

また本に戻す栞や冴返る 藤田敦子

鳥風や天窓を足す設計図 和緒玲子

貝寄風やぺらぺらめくる予言の書 榎本祐子

春の娘の手に少年の1ピース 小松敦

白詰草ほんとの白になれぬまま 妙子

もだえ神ますますもだえ不知火忌 夏谷胡桃

蛇穴をぞろり出てくる領収証 野口佐稔

父撮りし昭和の姉妹ひな祭り 野口思づゑ

エリカ咲き風が吹きよく笑うひと 平田薫

雪の果あれこれそれで済む夫婦 石川まゆみ

戦世(いくさゆ)の迷い道にをる春の犬 小田嶋美和子

甘えれば古里の雪の温きかな 塩野正春

学僧の木魚の乱れよ笹子鳴く 樽谷宗寛

再建の校舎の息吹下萌ゆる 比良山

アメリカになりしこの日の寒桜 柳咲八

煙草手に走りだしたり沈丁花 六月

薄明の百済観音や猫の恋 石鎚優

薄汚れ上履ききつし卒業式 満葉

   ◇

 今回は35名うち初参加2名。毎回少しずつ参加者が入替わりながらも40名程の均衡をキープ。
 最高点10点「てのひらの」、映像鮮明、柔らかい、可愛らしい、身の程に合った生き方、等。平仮名表記が奏効。試しにやってみたという人!もいたが、普通のことだと思った人は採らない句。8点句「遠足は」、採った人は皆幼少の記憶に実感あり。実感なき人は採らず、むしろ主格の「は」や「孤独」に違和感有りとも。同8点句「目貼剥ぐ」、採った人は概ね、張りや凝りがほぐれ柔らかくなる春を感じ、心のネジが緩む、と共感。反して「硬き背中」は作りすぎ、「剝ぐ」とか「ゆるめ」とか言葉で説明しすぎ、「ゆるめ」るのだから「硬き」は説明的で不要、等々議論百出。他方、ネジを緩めてくれるのは理学療法士でリハビリの実感、との鑑賞には一同爆笑。6点句「それぞれに」、きれいな道や泥の道、人生それぞれの岐路。リフレインが効果的。至って普通と感じた人は採らなかった。5点句「木魚打てど」、「打てど打てど」に思いがこもる。一方、僧侶も俗人とは言うまでもなく当たり前との弁もあり(しかし改めて読むとクドすぎて可笑しい)。「涅槃西風」、「ねはんにし」の音も柔らかい。冬の間硬かった地面が柔らかくなってきた感覚が心地よい。そんなイメージと感覚が具体的に湧かない人は採らない。「新宿の」、「余寒」に癒えない傷を感じる。「新宿の絆創膏」に暗喩のイメージを捉えた人は採り、絆創膏と新宿が繋がらない人には採れなかった句。実際、新宿をよく知らないという参加者も。「撃ち方やめい!」、口語調で軽いけど内容は重い。ガザ、ウクライナ等の戦争への抗議。「しやぼん玉」を飛ばすことでこれらの戦争の馬鹿馬鹿しさを強調。内容には肯きつつも、やや狙いすぎとの声もあり。
 自分が採った句について、採らなかった人の意見を聞くことで、自分の選の癖=作句の課題に改めて気づいた、なるほど「選は創作」(※)だ、という方がいました。これも句会の醍醐味ですね。(記:「海原」小松敦)

※ご参考:「海原」同人で、「海原オンライン句会」にも常連の柳生正名(やぎゅうまさな)氏が講師をしている「朝日カルチャーセンター」新宿教室「俳句1日講座」2024年6月29日のテーマがまさに「選句とは何か 選を磨き作句を伸ばす」となっております。下記ウェブサイトご参照。
「朝日カルチャーセンター」新宿教室 2024年6月29日
柳生正名講師「俳句1日講座 選句とは何か 選を磨き作句を伸ばす」

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