埼玉県現代俳句大賞:第十九回(茂里 美絵)&第二十回(鳥山 由貴子)

埼玉県現代俳句協会が毎年実施している「埼玉県現代俳句大賞」にて、海原の仲間が二年連続で一位となりましたこと、遅ればせながらお知らせします。

第十九回(2022年)埼玉県現代俳句大賞 「準賞」* 

漂着す 茂里 美絵

晩夏とはまひるの櫂のひかりなり
かもめ淡し月白を曳き還らない
ワイングラスのゆるい曲線十三夜
泪つぶつつーアンドロメダ星雲
バンザイをして穂芒の一本に
秋蝶といま産土へ漂着す
ルリタテハゆくえは薄き昼の闇
さみしいからすこし口開け柘榴の実
逡巡の歩幅のゆるむとき照葉
少年のさ迷い銀河尖るまで
かもめにも深き秋冷パンデミック
病む人ら夕顔の実に頭を預け
バスタオルすこしよじれて白鳥座
聞き役の椅子のきしみや笑茸
本来の季語とりもどす白マスク

通常一位は「大賞」ですが、第十九回は同点一位が五名となったため、五名とも「準賞」としたそうです。

埼玉県現代俳句協会報 第 82号 2022年3月15日

第二十回(2023年)埼玉県現代俳句大賞 「大賞」 

夜が長過ぎる 鳥山 由貴子

水の秋鳥はかなしい歌うたう
植紅葉人差し指の火傷痕
木の実降る底なし沼に木の実降る
何もかもうやむや背高泡立草
竈馬ハロゲンランプで照らしてやる
暗転の舞台にひかる蜘蛛の糸
無人飛行機銀河の果に不時着す
遠火事のごとく縄文火焔土器
花野の夜サーカスがはじまっている
だまし絵の中の階段十三夜
こむら返り海鳴り夜が長過ぎる
鳴いているのは月の裏側螻蛄蚯蚓
真夜中の電話さびしい狐から
炭団坂菊坂暗闇坂濁酒
十一月化石のように目を醒ます

埼玉県現代俳句協会報 第 84号 2023年3月15日

以上

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