句会報:2024年2月「海原オンライン句会」

2024年2月は2/17(土)にZoom句会を開催。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:古今東西あなたが好きな俳句TOP5は?(自句以外で有名無名に関わらず) 結果はこちら


句会報:2024年2月「海原オンライン句会」

【高点句】(5点以上)

跳べそうな気もする春の水たまり 和緖玲子

鼓笛隊の先頭を行く紋白蝶 妙子

日向ぼこだらりどら猫どら息子 花舎薫

ヒヤシンスあの人らしい蔵書印 夏谷胡桃

カラフルなこの街が好き紙風船 野口思づゑ

「ふかふかのカフカ」と名付け雪兎 柳生正名

吊革の人みな揺るる蜃気楼 矢野二十四

【参加者各一句】(高点句以外)

まだ何も記さぬノートあたたかし 小西瞬夏

胸の蓋開けると機械冬銀河 小松敦

年の豆数へるほどにあやふやに 坂川花蓮

恋猫がまず踏んでいく朝の雪 野口佐稔

狐火ちろちろ胸倉という小暗がり 榎本祐子

咳き込んで三十九度の放屁なり 小野こうふう

がんばるべ春一番は向かい風 川嶋安起夫

チョコあげるダイヤちょうだいバレンタイン さかいまゆみ

秒針が自己主張する寒厨 佐藤詠子

墓じまひして旅人や蜜柑山 長谷歌子

春の展開図あたたむる冬芽よ 比良山

冬晴や破顔の豚の祀られて 宮下由美

痩せ牛のごつごつ蹲る春野 安部拓朗

着ぶくれの火傷の耳へ鳴る主文 石川まゆみ

山茶花の朱唇に水をふくませよ 石鎚優

詫びマニュアルの頭の下げ具合しずり雪 石橋いろり

おむすびを割れば漂う春の色 伊東リハじ

お利巧句見飽きて仰ぐ冬の空 小田嶋美和子

髪切りてフリオ・フロリダ弾く早春 桂凜火

実の名で死ぬという朝梅真白 田中信克

待春やグーパーグーパーの足の指 樽谷宗寛

ゴジラ来て冬日に湾をかき回す 坂内まんさく

節分や我が内の鬼豆喰らふ 満葉

ウルトラマン・太陽の塔・風光る 大渕久幸

背負いたる失意は疾うに春の空 木村寛伸

日脚伸ぶ宇治の団子の緑濃し 塩野正春

風花や少ししなびたポテトS 藤田敦子
   ◇
 今回は34名の参加。いつも通り3句出し5句選。ZOOM句会参加者の句は無点句も含め全句合評。作風も様々だが選の傾向もとりどりで毎回ワクワクする。そして何よりも楽しいのが他人の選評。自分では目もくれなかったような句が、選評で好句に変身するミラクル!この句をそんなふうに読むのか!?と目から鱗だったり。採らない理由も忌憚なく痛快。点数の少ない句の方が(何故わざわざその句を採った?)面白かったりもする。
 さて、最高点句は7点「跳べそうな」、潦か雪解水か、春だからこそ跳べそうと思う、柔らかで前向きな気分に共感。「も」に少しの不安あり。「春の水たまり」に気づいたことが素晴らしい。一方、水たまりを跳ぶのはよくある、新鮮さを感じないとの意見も。同じく7点「鼓笛隊の」、最近はあまり見かけない鼓笛隊、しかも紋白蝶が先導するなんてファンシーだけど、音楽も映像もすぐ浮かび動きがある。ちょっとノスタルジック。句全体で春を表している。採らない人からは、既視感あり、素直すぎるとの声。5点「日向ぼこ」、リズミカル。作者と共に面白がる句、それ以上ではない句(だがそれでよし)。「ヒヤシンス」、花言葉やギリシャ神話を背景に、読者各様に勝手なエピソードを展開。今は亡き「あの人」を偲んでいる。借りたまま返せなくなった。洋書だ、ダンテだ、等々。「カラフルな」、暗い時代の明るさ。「紙風船」で和風な色合いも。「この街」の抽象性については賛否両論あった。「カラフル」は街の雑然さを批判的に詠んでいるとの解釈も。「ふかふかのカフカ」、音の面白さ一本勝負。こういう句もあっていい。ロッテのキャラクター? 「吊革の」、人間の春の逡巡感。吊革に掴まる人々がふと蜃気楼の中に揺れている不思議。
 ほか、低得点なるもさりげなく味わい深い句がたくさんあり賑やかな合評となった。金子兜太の「平明で重いもの」や昨年の全国大会で出たキーワード「実景の中に暗喩」(※)を思い起こした。(記:「海原」小松敦)

※2023年第二回「海原」全国大会の詳細レポートは海原2024年3月号(第56号)をご参照。

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