句会報:2024年1月「海原オンライン句会」

2024年1月は1/20(土)にZoom句会を開催。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:あなたにとって「秀句」とはどのような句ですか? 結果はこちら


句会報:2024年1月「海原オンライン句会」

【高点句】(5点以上)

マフラーをほどくわたしを明け渡す 宮下由美

日記買ふ三百六十五のあした 花舎薫

着ぶくれと着ぶくれそっけない街に 安部拓朗

家系図の未完に終り蝉氷 小松敦

松過ぎの厨に残る子等の箸 佐藤詠子

母病んでうろうろこんなにも冬星 安部拓朗

論文の始まりのよう冬木の芽 佐藤詠子

一刷の紙面匂へる霜の朝 藤田敦子

鯛焼の板はざぶんと裏返る 瑞穂

【参加者各一句】(高点句以外)

八代亜紀唄ふブルース炭が爆ず 和緒玲子

けさの春土に還らぬものの群れ 石鎚優

思い出し笑いの寝顔ねこやなぎ 石橋いろり

ポインセチア嘘をつくのが仕事です 大渕久幸

侵略を炬燵で眺む我の貌 小野こうふう

冬日差し背中にあてて文庫本 川嶋安起夫

赤ん坊の軽さ重みを知る初湯 塩野正春

冬の虹街は瓦礫でつながれて 田中信克

赤糸のしゆつと通つて縫始 長谷歌子

蝋石で描く階段白鳥来る 夏谷胡桃

小さな神社の小さな列初詣 野口思づゑ

湯豆腐のやうな人なり冬の宵 矢野二十四

春近し大看板にめしうどん わらしべ

風は友だち笑いよじれる裸木 石川まゆみ

寒鯉の目玉ぎろりとこぼれそう 桂凜火

全壊の屋根の重さや嫁が君 木村寛伸

またひとつまたひとつまた雪をんな 小西瞬夏

突っつけば嫌がる虫これ意思疎通 坂内まんさく

海が海であり黒鉄黐に赤い実 平田薫

亡き母の小袖のにほひ小正月 満葉

幼子の鼻歌ぽつり冬菫 伊東リハじ

こころという名の子の呉れし冬林檎 榎本祐子

冬曇りレーズンサンド微笑感 葛城広光

夜道の途私を止める寒椿 圭子

淑気満つスタート砲待つ大手町 さかいまゆみ

狐火を追ひつつ我を忘れけり 坂川花蓮

初春のつましき茶店日が渡る 樽谷宗寛

断層に怯え原子炉虎落笛 野口佐稔

供えたる栗饅頭の皺七日 比良山

輪島より来し年賀状音無くす ふわり

見送りてつららつららの十勝晴れ 看做しみず

冬至日の影は昇平グラブ持ち 後藤雅文

除夜の鐘言いたくない気分おめでとう 谷口道子

東京ドーム三個の餡子宇津田姫 藤川宏樹
   ◇
 今回は41名、うち新規参加者が8名(いずれも海原ではない方々)。参加地域はグローバルで、ロサンゼルス、ハワイ、シドニー、日本全国各地より。初心者からベテランまで句柄も多種多様であった。金沢からの参加者はもとより元日の大地震を心配する句、能登に限らず東欧や中東の瓦礫に思いを寄せる句も多く、平和を願う強い気持ちを共感した。
 さて、最高点句はぶっちぎりの15点「マフラーを」、「ほどく」「明け渡す」に読者それぞれのイメージが膨らんだ。迷いを捨てた、さらけ出した、解放された、等々。土地や家に使われる「明け渡す」の措辞が絶妙。明け渡したくない、など気持ちがついていかない人は採らなかった。8点「日記買ふ」、「あした」でポジティブな気持ちになった人は採った。採らない人からは説明的だとの声。7点「着ぶくれと」、着ぶくれて互いに無関心でも触れ合う街の情緒、「そっけない」に哀愁。7点「家系図の」、「蝉氷」の斡旋良し。綺麗だけど付き過ぎ、家系図の句はよく見るとも。6点「松過ぎの」、生活感が端的に現れていると思う人は採った。5点「母病んで」、「うろうろ」しているのは子か母か、いずれにせよ「こんなにも冬星」が悲しい。「論文の」、やがて膨らみ葉や花に展開してゆく「冬木の芽」の喩えに納得した人は採った。「一刷の」、寒々とした体感を覚える。早刷は無論「朝」なので重複感ありとも。「鯛焼の」、「ざぶんと」およげ!のリズムが楽しい。「板」か「型」かとの声もあり。今回も合評の中に様々な気づきがあり楽しかった。
(記:「海原」小松敦)

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