句会報:2023年10月「海原オンライン句会」

「海原オンライン句会」10/21(土)にZoom句会を実施。
 2023年11月は申込受付中:https://kaigen.art/online/

 今回も回答任意でアンケートを実施。Q:「AI俳句(人工知能が俳句を作ること、作った俳句)」についてどう思いますか? 結果はこちら


句会報:2023年10月「海原オンライン句会」

【高点句】(五点以上)

子を連れて謝りに行く秋夕焼 菅原春み

改行のごとき挨拶さわやかに 安部拓朗

母のことそのははのこと菊を焚く 小西瞬夏

鶏頭や母に楯突く模試の朝 満葉

オムレツを食ふ狙撃兵あかとんぼ 石鎚優

古書市に『暮しの手帖』花紫苑 大浦ともこ

火恋し夜のふくらみ人のふくらみ 小松敦

花野道ヒトに矢印お手洗い 野口佐稔

父と夫同じ芋科の別のいも 野口しずゑ

そうですか不知火ですか僕たちは 矢野二十四

【参加者各一句】(高点句以外)

夜を穿つ月の孤独を私す 榎本祐子

太刀魚のすらりと長し断ち切らる 宮下由美

ゆでたまご秋は普遍が見えてくる 佐藤詠子

老いてゆくなり木犀の香りして 田中信克

疎水べり猫軍団と月を待つ 樽谷宗寛

武装した市民が林檎齧ってる 夏谷胡桃

小鳥来る空はでこぼこしているか 平田薫

満月へ滑走は錆びゆく線路 増田天志

新涼やふと止まりたる朝の箸 伊東孝浩

「いっしょにメシ食うべえよぉ」と小鳥来る 大渕久幸

グラビアの笑窪広がり洞と化す 葛城広光

花野原張り巡らされる導火線 桂凛火

どう見ても終活要らぬ案山子です 木村寛伸

秋蝶の軽さを試す小枝いじわる 塩野正春

人工衛星彼岸花満開の夕空 谷口道子

とこしえの浮き足の白曼珠紗華 柳生正名

返事無き猿よ秋思のあるごとく 石川まゆみ

ロシアンルーレット交差点の白菊 石橋いろり

夜寒さよ簾にすがる猫の陰 小池信平

歳たけて命をここに涸沢紅葉 後藤雅文

ベトナムのこしひかりに似この新米 坂内まんさく

「倫」に見ゆパルテノンふと後の月 藤川宏樹
         ◇
 今回も選がかなりばらけた。九十六句中三点以下が五十六句、うち一点句が二十八句ある。一見、参加者の好みが多様なことをうかがわせるが、高点句には共感・実感を得やすい母・父・夫・子を詠み込んだ句が目立つ。「海原」の俳句にも景より人を詠む傾向が見え、句のテーマ・選の偏りが句の幅を狭めまいかと懸念する意見も出た。
 最高点は九点「子を連れて」、子として親として、多くの共感を得た。共感は出来るものの、ありふれた光景で採れずの声も。八点「改行のごとき」、読者によって様々に「改行」のシチュエーションを思い描く楽しさがあった。一方「さわやか」がありきたりとの声も複数。七点「母のこと」、季語の斡旋がおしゃれ、リフレインの表現に工夫あり効いている。六点「鶏頭や」、実感を感じて採る人の一方で状況説明との声も。「鶏頭や」には賛否あり。五点「オムレツを」、狙撃兵とて普通の人間であるということを言いたいのだと理解は出来るが、強調しすぎ(おおげさ)ではないかとの声、狙撃兵の少女を主人公にした小説の読書体験が影響したとの声もあり。「古書市に」、ずばり『暮らしの手帖』への思い入れの有無が選を分けた。「火恋し」、「ふくらみ」のリフレインが妙とも微妙とも。「花野道」、「ヒトに矢印」の解釈に幅あり。矢印記号などを必要とするヒトとヒト以外の世界の対比がさわやか。「父と夫」、「別のいも」を読者それぞれに面白がっていた。「芋」と言われることに納得感がない、また、「母と妻」にした場合でも面白がれるのか、との抗議あり。「そうですか」、「不知火」の解釈に奥行を感じて良しとする意見に対し、曖昧でよく分からないとの声もあった。会話を大胆に省略して切り出した表記が秀逸との声も。侃侃諤諤だったのは四点句「仮縫ひの待針余す十三夜(小西瞬夏)」。「余す」が巧い、リアリティ有り。一方、綺麗に仕立て過ぎでは、上五中七の状況と心情に対し「十三夜」で良いのか疑問、との声も。
(記:「海原」小松敦)

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