句会報:2023年9月「海原オンライン句会」

 「海原オンライン句会」9月は16日(土)にZoom句会を実施。

 10月申込受付中。https://kaigen.art/online/

 なお、今回も、回答任意でアンケートを実施。Q:句のテーマや素材は、どのようにして獲得しますか?結果はこちら。よろしければご覧ください。


句会報:2023年9月「海原オンライン句会」

 今回より投句と選句のみでの参加(Zoom句会は欠席)も可能とし、参加者が増え36名となった。
 誰にも分かりやすい句は共感を呼び点数もそれなりに入る一方、内容・テーマがありふれていることも多く、表現のユニークさが猶更重視され、選を左右するようだ。この句会では、句の内容と併せて表現面にも着目し、採った理由よりも採らなかった理由を意識して合評していきたい。

【高点句】(5点以上・冒頭の数字は点数)

14 ほしづくよ母の敬語の刺さりけり 安部拓朗

11 小鳥来て戦争を足もとに置く 夏谷胡桃

7 キューピーの睫毛の疲れ晩夏光 田中信克

6 死ぬまでの主治医爽やかに挨拶 石川まゆみ

6 赤とんぼ交わるどの空も愉快 三枝みずほ

6 新しい靴にて月を呼びに行く 佐藤詠子

6 「ごはんまだ」「またそうめん」がこだまする 満葉

5 蚤市に皇子の写真赤とんぼ 夏谷胡桃

5 炎天の護岸工事の声ふとく 吉澤恭香

【参加者各1句】(高点句以外)

きみとならヌードになれるねこじゃらし 石鎚優

ポケットに空蝉確かめている不安 榎本祐子

右寄りの二死満塁の案山子です 木村寛伸

標本は羽ばたくかたち秋の天 小西瞬夏

人形の家のしきたり黴の花 小松敦

新涼やするりと通るシャツの袖 宮下由美

思い出も微塵の更地草雲雀 伊東孝浩

反戦の歌とは知らず草の花 大浦ともこ

炎天より戻りこの世の水を飲む 菅原春み

小鳥来る私の鉛筆硬いまま 谷口道子

老いたれど用心棒なり月の道 野口佐稔

頑張らぬ事を頑張る案山子かな 大渕久幸

段ボール朽ちてこほろぎ棲みにけり 小野こうふう

遠ざかる昭和の平和ソーダ水 川畑亜紀

秋掴む富士の高さへ背伸びして 後藤雅文

鈴虫や弄る先に妻おらず 坂内まんさく

縷紅草ちいさい一日でありぬ 平田薫

蟷螂飛んだ歌舞伎役者のやんちゃ 藤川宏樹

サンダルを拇指のはみ出す母似かな 藤田敦子

神風とならずに還る稲の花 柳生正名

補聴器買おう右耳の蝉時雨 石橋いろり

お味噌汁夕餉の雲を温めて 葛城広光

ひとり飯チャットアプリかふ・ふ・ふ 塩野正春

ぶら下がり人生蓑虫よ妻よ 樽谷宗寛

黄蝶あり葉の露啜りて離れざり 小田嶋美和子

草を引く一本一本のいのちかな 小池信平

御遺体は軍事費のせい地虫なく 野口思づゑ

八月尽みな足早に朝の駅 矢野二十四

 最高点句14点「ほしづくよ」、「母の敬語」の解釈が二つに分かれた。大事なことを話す時に敬語になっている状況、認知症ゆえに他人行儀になっている状況、後者で捉える者多し。採らなかった意見としては、親の認知症のテーマには食傷気味、「刺さりけり」の表現が報告的、心に刺さったその心情を別の言葉で、など。「ほしづくよ」のひらがな表記には、幼いころからの母への親しみ、母他界説、など諸々意見が出た。11点「小鳥来て」、現代の戦争が小鳥来るようにさりげなく近寄る空恐ろしさに共感する声、小鳥と戦争を二物衝撃させる不条理性を評価する声、「ある」とか「くる」ではなく「置く」が秀逸との声など。小鳥に旧ツイッターの青い鳥を重ねた者もあり。採らない弁としては、戦争が綺麗すぎる、軽い、もっと重いもの、との意見が多。渡辺白泉や三橋敏雄に触れる意見もあった。7点「キューピーの」、「キューピーの睫毛」への着眼良しとの意見多数。一方で、「疲れ」と言わずに疲れを表現したい、「睫毛の疲れ」に作為感じる、等の意見もあり。6点「死ぬまでの」、死ぬのは患者なのかそれとも主治医の方なのか、との解釈に分かれあるも、大方は患者。死んだらお終いと吹っ切れていて爽やか。医学的な見地で、患者に同情などせず敢えていつも爽やかにしているのだ、との意見も。6点「赤とんぼ」、「交わる」の解釈が分かれた。たくさんの蜻蛉が縦横に交わるように飛んでいる様、「交接飛翔」している様。採らない声としては「どの空も」がわからない。採った者は「愉快」の着地に好感。6点「新しい」、月の出を迎えに行くイメージ、発想が美しい、夜に新しい靴をおろすことから野辺送りをイメージするとの声も。採らない人は「分からない」、ファンタジーを好まない。6点「ごはんまだ」、猛暑の今夏ありふれた光景に共感して採る者も外す者も。「こだまする」と書かれてもこだましているように感じない、との意見も。5点「蚤市に」オーストリアとか外国の蚤市の印象、赤とんぼが時空を越境している、ノスタルジー、「皇子の写真」に平和を感じる、など。採らない人はリアリティを感じなかった様子。5点「炎天の」、炎天・工事の声・ふとく、全てお決まりのありふれた光景で採れない、との声。採った人はこのありきたりに共感。
 どんな俳句を好み、目指すのか、俳句に何を求めるのか、といった根本的なスタンスの違いが明らかになる合評であった。
(記:「海原」小松敦)

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