眼差し 三枝みずほ

『海原』No.27(2021/4/1発行)誌面より

◆第2回海原金子兜太賞受賞第一作〔3回連作・その3〕

眼差し 三枝みずほ

どのこゑも遠し青き空ひとつ
石ころがほろほろ零れ春の川
さてもまたあなたの春野さまよへり
蛇穴を出て飴色にひかるもの
葉脈の透けて弥生の朝かな
髪結師咥えし紐の真白なり
山間の歌もて春の宮参り
手のひらの椿のほかは揺れてをり
白く濡れてゆくさくらの参道を
おおかみの眼差しがあり囀れり

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です