『海原』No.69(2025/6/1発行)誌面より
第3回兜太祭 レポート(一部抜粋)
とき:2025年3月29日(土)~31日(月)
(有志一泊吟行含む)
ところ:秩父長瀞「長生館」
(有志一泊吟行は「第一ホテル秩父」)
●第一日●墓参と壺春堂吟行
吟行ならではの句が並ぶ 小西瞬夏
兜太祭初日、急に寒さが戻り春の雨が降りしきる中、兜太先生のお墓参りを済ませ、壺春堂を訪れた。思いがけず、今回は先生の幼いころの作文がいくつか展示されてあり、負けず嫌いで努力家、率直にものを言う大らかさなど、先生の核心、原点を垣間見ることができたひとときであった。


その日の夜の第一句会は、司会・宮崎斗士、特別選者・安西篤、堀之内長一、遠山郁好、川田由美子の四人である。
作文のマス目食み出す春の夢 小西瞬夏
第一次句会での最高点( 10点)の句。
吟行ならではの句。今日の実感。「春の夢」でいいのか。季語の本意は「はかないもの」だが。先生の作文は枠からはみ出ていなかった。「はみ出ず」ならとっていたかも。
次の三句はそれぞれ7点句。
額ずけば草の名あふれ秩父谷 遠山郁好
ひとつひとつの草に名前があるという生き物感覚。「額ずけば」は祈りの気持ち。やや陶酔してしまったのでは。
雪柳はらはら墓にふる言葉 室田洋子
映像が浮かぶ。リズムもいい。「言葉」は安易ではないか?「ふる」はいらないか。
櫻雨真っすぐな少年の作文 石橋いろり
今日の先生の作文の把握として「真っすぐ」がよい。逆に少年は真っすぐでいいのか?
次の三句はそれぞれ6点句。
俳諧自由ものの芽息吹く雨のなか 田中信克
俳諧自由がよい。ちょっと説明的か?
春時雨斗士さん走る供花抱え 野口佐稔
挨拶句としてよい。時雨はひらがなの方が。
「まあまあ」の赤ペンまあまあの桜です 森由美子
堀之内長一の特選。兜太先生の「まあまあ」が思い出される。
次の三句はそれぞれ5点句。
転機ってほら目の前のヒヤシンス 宮崎斗士
俳句ってこんな感じで作れるんだ。
初花や父の骨格母の癖 川田由美子
伝統的な作り方。対比がよい。
龍神のいて花冷えの床鳴らす 遠山郁好
能の映像のような一つの世界。身体感覚。
次の6句は4点句。
めそめそとゆく果てぽっかり桜山 こしのゆみこ
産土の庭の一隅二輪草 石川まゆみ
長瀞暮れてアンモナイトに滑り込む 望月士郎
新月の背梁山脈花の雨 野﨑憲子
春の昼兜太の尿瓶欠伸せり 森由美子
君がくれたわたしの素顔花かたくり 宮崎斗士
特別選者の特選句を以下に。
安西篤特選。
春霞悼み去るまで千切りけり 森本由美子
川田由美子の特選。
ひと雨もくればぽっかりクロッカス 北上正枝
遠山郁好の特選。
芽ぶく日の大樹始めての授乳 森本由美子

※以降、第四次句会まで続きますが本ウェブサイト掲載は割愛します。『海原』本誌でご覧ください。
第二日●第二次句会 俳句は詩、俳句は俳句 北川コト
第二日●第三次句会 秩父の空気を食べながら 石川まゆみ
第三日●第四次句会 楽しさと信頼と 田中信克