第1回海原全国大会レポート(その3)

『海原』No.16(2020/3/1発行)誌面より
◆第1回海原全国大会レポート(その3)

《第三日●第三次句会》
兜太師の気配を感じながら 山下一夫


 前夕には、宿のそばから瀬戸内海に沈む美しい夕陽を拝めたが、当日の朝は曇りで海は鈍色であった。テレビはどのチャンネルも台風19号による方々の惨状の報道。朝食会場では心配のコメントが交錯していた。
 句会会場は、西方に海を一望する大会議室。日程の最後であり、大きなロの字に組んだテーブルに並ぶ44名の一座には、軽い疲労の雰囲気も漂っていた。
 総合司会・進行は中野佑海、披講は室田洋子・鳥山由貴子。一人2投句5句選。全投句は、A3用紙二段組に整った手書き文字で空欄なく清記され、スタッフの心遣いが偲ばれた。奇しくも霊場八十八か所に因んだかのように88句が並んだ。
 88句巡りの司会は、佐孝石画。開口一番、選句点数がこんなにばらけた句会は珍しい、一同の多様性の現れであり、それは「海程」から「海原」になってもしっかり引き継がれているものと。ただし、最高点句は、抜きん出た10点であった。
 秋夕焼島はゆっくり鍵を掛け 奥山和子
 鍵が掛かるのは島の生活でもあり、自分自身でもありいろいろな思いが湧いてくる。開閉に自然のリズムもあり重層的。一体感の中にある安心感。ゆっくり夜になる気分がOK。吟行句の良さがある。
 わかりやすくはない句だが鑑賞者の妄想がすごい、そこいらにはないすごい句会であると司会。その後も盛り上げるコメントを交えながら歯切れよく進行する。
 白秋やもろみ大桶おおこが百ならぶ 西美惠子
 吟行で醤油工場を見学して「大桶」という言葉を初めて知ったが、それを使って情景を活写。前句と対照的にこれぞ俳句という句。季語「白秋」が秀逸。「白」の色、冷たい触感が醤油の「黒」と肌合いと対照する。また、「百」とのビジュアルの対照も指摘され、感心が広がった。
 秋深し木の定規なら計れます 綾田節子
 木の定規が温かい。吟行で訪れた分教場で目にしたが、時代、ノスタルジーを感じる。季語と透けず使いにくい木の定規に人の心の深さを連想。「深さ」と「計る」の連関。木の定規に勅諭として力があると、深まる。
 四方指とおくに我が滑空の鳥影 佐孝石画
 四方指の高さを良く捉えている。自分の影が鳥となっている雄大な景。気持ち良さを言い得ている。「我が」については、ナルチスチック、無い方が良いと、そこがポイントで無いとつまらない作品と意見が分かれた。司会ご本人の句であった。どおりでコメントなく整理に徹しておられたわけである。
 ゆく秋の島影それぞれの心音 望月士郎
 「心音」の含意について、生活のリズム、吟行のバスに同乗していた皆の心音、島の明け暮れのリズム、島が擬人化されていて島それぞれの心音と解釈が広がったが、「それぞれ」に少し違和感を感じるとの評もあり。
 秋の水脈いい大会でした先生 伊藤巌
 ベタだがジーンときた。先生の句にある「水脈」を取り込んで素直に想いを表現。「小豆島水脈大会」との混ぜ返しが入ったが、「会員の一人一人が水脈、何よりの挨拶句をありがとう」との鑑賞が応じて拍手が湧く。武田伸一が「実感が良く出ている。我々の航跡と行きかう船のイメージ。取らなかった人もそうは思っている。一字空けて先生に万感。」とまとめられた。
 この辺りで一座は一体に。刹那、兜太師の気配を感じ、ばらけた選句傾向は一座のそれぞれが触手を出して繋がり合い立体をなしているものとのイメージが浮かぶ。それは幻想かも知れなかったが、気付くと空は晴れ海は青んでいたのは、本当である。
 ふくふくと息するもろみ秋深し 石川まゆみ
 「ふくふく」という擬態語が良い。「秋深し」については、もっと良い季語があるかも、「フ」の音の重なりにじわっとくると分かれた。
 島にオリーブ廃校にわらべ歌 川崎千鶴子
 訪れた分教場で皆で歌を歌ったが、四つの要素をうまく配合した。単純さと力強さ、挨拶句として優れていると好評が並んだが、AにB、CにDの構成への問題意識も呈された。
 以上、5点句までだが、当日の選句者等による鑑賞は、4点句まで及んだ。
 句会は、武田氏から零点句・1点句へ真心がこもった鑑賞で締め。僅かであっても、一座でその場に呈された句を味わい学ぼうとする丁寧さも本会の良き伝統と感じ入った。
 続いて、本大会代表者の野﨑憲子からの挨拶にて記念すべき第一回大会が閉会した。

《第1回「海原全国大会」を終えて》
小豆島の満月に見守られて 野﨑憲子


 それは、一年半ほど前の一本の電話から始まりました。電話口から宮崎斗士さんの声がして「野﨑さんですか?第一回の全国大会を香川で開催して欲しいという意見があります。お願いできませんか?」。私は、驚きと共に一瞬沈黙してしまいました。このリクエストを、金子兜太先生のご存命中にいただいたらどんなに嬉しかったかという思いが駆け巡る中、これは先生のご遺志であるという思いが大きく膨らんでまいりました。ただ、少人数である「海程香川」のメンバーだけではとうていスムーズな大会運営は望めないという危惧もあり「本部で、お手伝い願えるなら前向きに検討させていただきます」と返事をしました。
 幸い、第1回の「海原全国大会」開催という栄誉に「海程香川」の仲間達からも、賛同を得る事が出来、大会開催を決めました。そして引き受けた限りは、ご参加の方々に存分に楽しんでいただこうと、有志吟行は、大海原を渡り、小豆島へ行くことで意見が一致しました。
 まず、昨年8月、施設選びからのスタートです。最初から、中野佑海が積極的に協力してくださり、有難かったです。ただ本年の10月は、瀬戸内国際芸術祭秋会期の真っただ中なので、第一候補の高松駅前のホテルは、土・日が空いているのは月の後半のみ、しかも行楽期なので、一年で一番高い価格設定の時期ということでした。
 叶うなら総会も宿泊も全て同一ホテルで開きたかったのですが、従来の予算内で賄うことは不可能なので断念しました。そして、大会は、10月12日からと決め、総会の会場はサンポートホール高松、宿は「花樹海」と決定しました。
 ちょうど折良く、中野佑海から置県百年特別企画で、香川県芸術文化振興財団から援助金を交付する文化事業の募集をしているとの情報が届き直ちに応募しました。選考のヒアリングの席上、金子兜太先生の「海程」の後継誌「海原」の第1回全国大会の開催の経緯を説明しますと、審査の方々も好印象を持ってくださり、公開講演会を開くという条件付きで会場費の援助を受けられることになりました。毎月の句会場でもあるサンポートホール高松での大会開催に向け陽光が一気に差し込んだ思いでした。
 大活躍の中野へ、大会当日の総合司会をお願いすると即座に快諾し立派にやり遂げて下さいました。会場の横幕は、書家の漆原義典。有志吟行は、小豆島の地理に詳しい藤川宏樹が、とっておきの小豆島を提案して下さいました。島田章平は、大会の裏方の詳細な進行表を作る提案を出して下さり、お陰様でスムーズな大会運営ができました。河田清峰と鈴木幸江は、会場に入らず、書籍販売ブースのある受付で総会終了まで待機して下さいました。そして大会の要である句会の統括は、増田天志が積極的に務めてくださり、効率的に素晴らしい句会を開くことが出来ました。
 マイク係も、感謝です。佐藤仁美、三枝みずほ、小西瞬夏、大西政司、樽谷寬子、田中怜子、谷口道子、榎本祐子にも多大なご助力をいただきました。感謝です!
 台風発生を大会前に知った瞬間はショックでしたが、否、これはチャンスだ!台風が特別ゲストの全国大会なんて願ってもないことだと思い直しました。すると、来賓の金子眞土ご夫妻の前泊のご連絡を皮切りに、高松での前泊の方が増え、時局がみるみる好転してまいりました。ご夫妻にお目にかかると、先生をより身近に感じます。大会を盛会へと導いてくださり、ほんとうに嬉しかったです。ただ、諸事情で予定変更ならず参加できなかった方々には申し訳ない思いでいっぱいでした。公開講演会の開催日を動かせず、宿の確保の難しさから、中止や順延という選択肢がなかったのです。お許しください。
 講演会も台風接近のため、一般の来場者は少なかったのですが、安西篤代表と堀之内長一編集長の対談形式の「金子兜太という存在――句集『百年』の魅力を探る」、田中亜美さんの「若い世代に広がる俳句」どちらも聞きごたえ十分の見事な講演会でした。
 今回の全国大会で、私もいろんな勉強をさせていただきました。ご参加くださった全ての方々に心からお礼を申し上げます。大会最終日の小豆島の夜の満月が何故か兜太先生の大笑いしたお顔に見えて仕方なかったです。

熱く、そして温かく 中野佑海

 平成30年の2月、第1回海原全国大会を香川でと聞き、驚きつつも、今が一番若いからという理由のみでお受けする。
 7月、会場は香川句会の開かれるサンポートホール高松の小ホールの空いている10月12日~13日に決定。宿泊は句友一押しの「ホテル花樹海」に100人超えたら受けませんと言われつつ、無理押し頼む。
 吟行会は台風が来たら渡れないけど、夕日の絶景の小豆島の国民宿舎に決定。この時点ですでに空頼みの状態に。兜太先生のてるてる坊主を作って、お願いすることにする。小豆島へは2回も視察に行って、一番絶景の四方指展望台へ、雨が降れば、大阪城残石記念公園に決める。
 10月4日、最終打合せで、名簿、名札、部屋割り、プラカード、役割分担を決定する。さて、イザというこの期に及んで何と台風19号が如何に大型化という前触れを持って大会の当日、四国に上陸しそうな予報となった。とりあえず兜太師てるてる坊主「照男」君に命運を掛ける。
 10月9日、本部から第1回目の大会はどうしても開きたい旨連絡があった。金子眞土ご夫妻始め、できる限り前泊をお願いする。
 10月12日当日朝。風少し強いが、注意予報位。しかし、現場はてんやわんや。資料を何度も入れ直し。来られない方の数をずっと読み直し決定し、花樹海に昼までに電話して、それにお応え頂き有り難し。
 12時。いよいよ、第1回「海原全国大会」総会開催。幸いにも金子眞土様ご夫妻をお迎えし、故人になられた方の御冥福をお祈りし総会が始まった。
 武田氏より「海原」の会計報告、三賞の発表、表彰と順調に進んだ。眞土氏の兜太師の検証に尽くされている姿勢に心打たれた。
 公開講演会には、台風のため、高校生には入場頂けなかったが、一般の30名位の方が、参加された。安西篤、田中亜美の講演は俳句を広めるための熱心な働き掛けを感じた内容だった。
 第一次句会では、特別選者の方の講評に会場との掛け合いで、今台風が来ていることも忘れて、熱く話が盛り上がった。来てくださった方から、皆様しっかりした意見を述べられていて、時間を忘れた、とお聞きした。
 16時半。熱く、暖かな第一日目は終了。楽屋口から皆バスでホテル花樹海へと出発。
 18時半。眞土氏の「金子兜太」を一度離れたところから見てという言葉に納得。料理も美味しく、皆様の温かい言葉に癒されつつ明日の人数計算に勤しむ。風呂場には暴風が!
 13日9時。一般の方と、台風で欠席された方で座が少し寂しい。が、天気も良くなり元気に二日目に突入。松本勇二の司会。特別選者の方と、会場の応酬で、増田天志がマイクを持ち階段の会場を走る。喋る。皆俳句に熱い。
 11時半。名残惜しくも全大会終了。皆様、吟行に行く準備。荷物を持って、バスに飛び乗り、隣のフェリー乗り場からいざ小豆島へ。藤川さんの名リードで積み残し無く皆船中に。この日は絶好の行楽日和。二蝶のお弁当に、船からの瀬戸の景色と会話も絶好調。
 13時半。草壁港着。岬の分教場で一同「七つの子」を歌う。校庭のオリーブの実を拾って食べるも苦し。
 14時半。丸金醤油の木下様のご配慮にて工場内の大木桶を見学。お土産に生醤油頂く。
 15時半。風の冷たい四方指展望台。本物の絶景を堪能。皆で鳥になる。
 17時。ふるさと荘に到着。30分後の夕日の落ちて行く様。もう30分後の満月の浮かぶ様。天体ショーに「うおー」とただ叫ぶ。
 18時。最後の晩餐会。新同人を武田氏よりご紹介頂く。演台の代わりに椅子に立って揺れながら自己紹介&抱負を。酒に酔った勢いで叫ぶ。今日は感動し過ぎかな。
 19時半。小句会が始まる前に関東より金子斐子が駆け付ける。よくぞ此処まで。感謝。小句会は出句3句。2日間の総括は如何に。名残惜しさが更けていく。
 最終日9時。佐孝石画のよく通る声で司会の第三次句会始まる。皆ちらほらと、連日の疲れと、終了の安堵の心地良さに景色の麗らかさに身を任せたくなる。皆で言い合える句会は楽し。
 この後は、各自の予定に合わせて、福田港に急ぐ組。急がない方は土庄港の近くにある尾崎放哉記念館「南郷庵」と千年オリーブの樹を見学。土庄港では総勢10名余り、フェリーを「待ってー」と、5分も止めて、無事高松に帰り着いた。あーお疲れ様でした。でも、本当に楽しかった。皆、今浦島太郎となり、帰ってからの止め処無き日常。
 被災されました方のご心労は如何ばかりかと察してまだ余りあるものと存じます。  (文中、会員の敬称略)

《全国大会事前投句/特別選者特選一句抄》

【安西篤選】
おなごせんせー谺して海天の川 伊藤巌
【大西健司選】
雨気孕む肉よ野越えの人形座 野田信章
【川崎益太郎選】
海原に光トラック島に虹 島田章平
【こしのゆみこ選】
雨気孕む肉よ野越えの人形座 野田信章
【佐孝石画選】
まくなぎや明るい出口までふたり 小松敦
【十河宣洋選】
指紋という小さな銀河針しごと 望月士郎
【高木一惠選】
指紋という小さな銀河針しごと 望月士郎
【武田伸一選】
空蝉の中に風吹く無言館 若森京子
【田中亜美選】
空海兜太猿酒酌むや讃岐富士 すずき穂波
【遠山郁好選】
巻き癖の海図の上へ青檸檬 鳥山由貴子
【並木邑人選】
夜の端ときどき纏う蛇の衣 榎本祐子
【野田信章選】
わだつみや添寝に白波立ち八月 若森京子
【藤野武選】
夜を待つ雲ひとつ居て夏の窓 佐孝石画
【堀之内長一選】
晩夏光鳥籠のようとらわれて 川田由美子
【前田典子選】
野分たつ嘘ひとつぶんの距離にいて 松井麻容子
【松本勇二選】
まくなぎや明るい出口までふたり 小松敦
【柳生正名選】
巻き癖の海図の上へ青檸檬 鳥山由貴子
【若森京子選】
空海兜太猿酒酌むや讃岐富士 すずき穂波

《大会作品》(前掲作者を除く一句抄)

居心地の良さそう涅槃図余白かな 永田タヱ子
天の川村深々とデブリ溜る 白石修章
薄倖の女児消ゆる日の手鞠花 石川まゆみ
病窓や深夜マンタに会うことも 遠山郁好
根ではない脚だ青嶺に押し出して 高木一惠
祗園祭万有引力曳いている 武田伸一
ででむしの肉色あはし遠発破 小西瞬夏
花菖蒲きつと御前は鯉になる 樽谷寬子
これよりの終活の日々合歓の花 寺町志津子
日傘さす猫の目ほどの安心感 大野美代子
ベンチャーズ的な終始を百日紅 松本勇二
点眼す朝蟬灘を鳴きわたる 河田清峰
ネズミの喉しっかと黒猫夏野ゆく 竹本仰
軽トラに泥つきごぼうのごと眠る 藤田敦子
舟虫の群れて軍靴の迫り来る 山内祟弘
さやかなる四国海原音律無限 石橋いろり
赤紙来る頃芋の蔓引く頃 川崎千鶴子
ラムネ玉音まで吸うて球児ちる 西美惠子
桑の実をふふめば雲伏し雲ゆきぬ 水野真由美
天地や同行二人あかとんぼ 河西志帆
姉八十路暗譜で弾いたよゆかた会 杉野敬子
晩夏光父性はぐんぐん透明に 堀之内長一
食えない詩のために死ぬなよ赤楝蛇 並木邑人
きつつきの穴のまんまる憂国忌 北上正枝
ヒバクシャを残土とさせぬ原爆忌 川崎益太郎
赤蜻蛉また先生を泣かせたか 藤川宏樹
梅咲いていないないばあす兜太かな 鈴木幸江
老人ホームに虫ピンで止められし晩夏 藤野武
蝉時雨水の底からさんざめく 佐藤仁美
草いきれ生きる方便という家族 増田暁子
半夏生斜め下から母に似る 奥山和子
月の夜すい臓に効く君の声 山下一夫
生きる日の道草もあり穴惑い 藤田乙女
楊枝ほどの小鳥の足も敗戦日 芹沢愛子
火蛾浮かべ火蛾のかたちに水凹む 柳生正名
柚子は黄に相槌だけの母でいい 宮崎斗士
黒羽トンボが新宿駅で舞い給う 田中怜子
放哉や梨剥くナイフ濡れてをり 田中亜美
向日葵や子に捨てられそうな真昼 室田洋子
剥落の父の踏ん張り雲の峰 桂凜火
星雲の化石を背負ふ蝸牛 増田天志
記名なき箱の臍の緒つくつくし 中村道子
怒涛打つ岬に影や老遍路 赤崎ゆういち
走馬灯廃棄の中に昭和見る 漆原義典
骨を抜くシェフは長身女郎花 峰尾大介
画策の要らぬ雄日芝どこでもドア 中野佑海
眠れない死の数多あり八月尽 安西篤
少しづつ身軽になる年茗荷の子 疋田恵美子
原発止む夏雲狭間の風車群 滝澤泰斗
ハンガーに掛けた俺俺を確かむ 十河宣洋
芸術祭平面立体片えくぼ 太田順子
句集の余白国旗に余白いのこずち 河西志帆
海峡の月をくらげが食べている 大西健司
ちと誘う句会や蕪村の追而書 新田幸子
ジャージーの四肢抱く発電の體 久保智恵
夾竹桃の白さ疼きのヒロシマ 谷口道子
白障子あたりいちめん明るいフェイク ナカムラ薫
言つとくけどね僕いじめたら颱風くるよ 野﨑憲子
梅雨明や湿った風に火の匂い 江良修
森のパン屋御盆は休み旅に出る 谷川瞳
皿運ぶせっせがちゃがちゃ良夜の子 三枝みずほ
まだ亡妻に掌など合わせず秋彼岸 綾田節子
梟が鳴くわたくしの痛点あたり 金子斐子
礫刑の熊蟬単騎地上にあり 大西政司
雲の峰大山巓が啣えこむ 佐藤稚鬼
赤のまま喃語あたかも黄金比 藤原美恵子
骨太の兜太のサイン夏である 菅原春み
遺されて菫濃き野に吹かれいる 前田典子
空蝉のなおも何かを脱ごうとす こしのゆみこ
父のこゑ海から来たる秋うらら 亀山祐美子

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