私の好きな俳句5句と谷さんとの思い出◆伊藤淳子・平田薫

『海原』No.27(2021/4/1発行)誌面より

◆私の好きな俳句5句と谷さんとの思い出◆

三人会 伊藤淳子

 野ヤギたち全体としてご近所なり
 ひまわりと俺たちなんだか美男子なり
 たくさんの心が僕に蕎麦の花
 もう五年です小春のお墓皆子様
 愛は消えてもそこはまぁ紅葉です

 谷さんから誘って頂いて月一回の吟行を始めたのは、海程の東京例会が両国で開催されていた時であった。始めは二人で、後に三井絹枝さんが参加して、三人会と名付けたこの会は随分長く続いた。何処へでも出かけたし、句会場も三人の身軽さで、時には喫茶店の片隅だったり、庭園の四阿だったりも、良き思い出である。谷さんは、俳句に関しては揺るぎない信念を持っていた(と思う)が他では、温かい人間味溢れる人であった。いつの頃からか、谷さんの発案で、折帖にその日の一句を筆で記し、落款を押して、それぞれに贈り合い、手元に残した。
 階段が心のようでなんじゃもんじゃ 谷佳紀
 二〇〇九年四月二三日。東京調布市の深大寺。唯一日付がある一句である。


まっすぐ 平田薫

 一人って空の広さで紅葉多分ですが
 人生はひらひら赤蜻蛉は軽い
 愛は消えてもそこはまぁ紅葉です
 ただ風を思うなるべく小春日の
 出会ったこと小石を手放したこと冬

 谷さんは心をまっすぐ書く、真っすぐ読む。優しく。
 〈みんな了解冬たんぽぽと隅の人〉〈団栗が大好き下手はあたりまえ〉〈猫は足もとそうかぴよぴよか
 こんな風に書いていいんだと嬉しかった。海程神奈川の句会は二カ月に一度、マラソンに参加していて来ないこともしばしばあった。
 〈小説がときどき僕を青葉にする〉〈ヘタウマ文化論と猛暑なのである〉〈俺はもう凄いのだと声百日紅
 私は谷さんの句をどんどん採った。
 雀ほどの智恵かな麦わら帽子かな 薫
 あるときこの句を谷さんが採った。「かな、かな」と重ねるのはどうかという意見が当然あった。谷さんは言った。この「かな」は自然に出てきた「かな」だと僕は思う。

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