手の影 三枝みずほ

『海原』No.25(2021/1/1発行)誌面より

◆第2回海原金子兜太賞受賞第一作〔3回連作・その1〕

手の影 三枝みずほ

青空の深さ声帯が震える
縄跳びや冬の虹立ち上がるまで
人体の散らばらぬよう焚火へ手
硝子戸に星の息づく漱石忌
指紋まで差し出す冬のタッチパネル
液晶に照らされる街冬の雨
呼吸器もろとも寒風が真正面
寒鴉群がる空よ詩が長い
身体の軸となる黒きセーター
手の影はやがてさみしいおおかみへ

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