路地灯り 大西健司

『海原』No.48(2023/5/1発行)誌面より

◆自由作品20句

路地灯り 大西健司

熟柿啜るは真人間なるエセ詩人
流木焼べ浜の男の新ばしり
開戦日湯呑みに酒を注いでおり
真珠塩と看板寒の道戻る
お国訛りの潮風ここは牡蠣の海
この先の入江へ続く蜜柑山
鳥羽一郎を歌う路地奥の煮豆屋
鷗探せば短き指の濡れており
バス停にマネキン石蓴の海が見ゆ
真珠塩の親父菜の花摘んでおり
「舟唄」がおはこ浅春の鋳掛屋
無番地で無慈悲隣のしおまねき
玉子焼は春の恋文かもめ町
喫茶ファイブに寄り道鰆漁師かな
風見鶏はジャズを歌うよ風光る
ラジオからジャズ鰆の糶進む
店主偏屈恋猫の名はサヨリ
春ショールのマネキン今日も店番す
深海魚のたぐい男は布団干す
喪服吊され春にかすかな火の匂い

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