句会報:2025年1月「海原オンライン句会」

2025年1月は1/18(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:2025年、中高生・大学生にお薦めの本、自分が読みたい本。ジャンル問わず、何冊でも。
結果はこちら


句会報:2025年1月「海原オンライン句会」

【高点句】(5点以上)

開戦日最前列の椅子が空く 三枝みずほ

いち抜けたにい抜けたとや年賀状 ながたに歌子

餅焼くや婚家の暗き台所 満葉

微睡みの湯たんぽ朝を手繰り寄せ 小松敦

知らないとこたえて柚子の黄色かな 平田薫

忘れたきこと根雪まであと少し 看做しみず

加留多切る嘘も秘密も綯交ぜに 宮下由美

複写紙の薄き質感春を待つ 向井麻代

【参加者各一句】(高点句以外)

火の匂ひ厨に満ちてもうすぐ雪 和緒玲子

ひとと云ふ獣たちあり山眠る 井上べん

焚火の舌ちろちろ何か言うており 榎本祐子

不知火や皿にナイフのあたる音 大渕久幸

手に胡桃ひたすらな青あるだろう 男波弘志

年新た死ぬまで生きるラッタッタ 花舎薫

埋火や無数の指の乾くまで 小西瞬夏

寒の水文学全集にグラシン紙 さかいまゆみ

外は北風配膳ロボット音なく来 野口佐稔

色鉛筆たくさん使おう新日記 野口思づゑ

不老不死探るヒト科や初鏡 姫

狐火と認知症ふわふわ来てる 川崎千鶴子

木守柿見ているかあちゃんに会いたい 田中信克

断頭の刃触れるまでは機嫌よく 坂内まんさく

ラグビーの静寂に溜める火の歓声 石川まゆみ

柚子の黄に太き刺添ふ淑気かな 石鎚優

偶数と奇数の狭間冬の虹 伊東リハじ

凝りという魔物に手古摺る年の暮れ 小田嶋美和子

ハンガーの錆から歌が聞こえるよ 葛城広光

年明けや親指折る人立てる人 樹下修司

ぽつねんと幾代経にけり火消壺 樽谷宗寛

薪ストーブ火つけが下手な妻である 夏谷胡桃

年始酒生きてることが祭りです 原洋一

終電の内は今日です冬銀河 藤田敦子

どんどの火空をつかみて千切れけり 矢野二十四

新年を貫く火球じぶんぎ座 桂凜火

地動説めくや能登路に初日出づ 木村寛伸

二日はやバタートーストこんがりと 坂川花蓮

今時の家今時の注連飾り 紗藍愛

ウイルス共戦い終へて白い息 塩野正春

冬の星映画の代わりに見る深夜 草汰

リウマチと友誼を結び寒の灸 門司侑里

けがれなき夢を見んとて冬ごもり 治子

初春やポケット突っ込み天仰ぐ 二月結卯

   ◇

 一月は42名。今回は三句中一句は「火」のテーマ詠。色々な発想が見えて面白く、勉強になった。
 最高9点「開戦日」、席が空いて戦の最前線に送られる、出征の暗喩と読む人多し。中七下五だけなら映画館や教室のよくある風景だが、「開戦日」が強烈に効いている。しかも昨今の時事を重ねると、十二月八日に限らずこれから始まる戦争の「開戦日」を暗示しているようで空恐ろしい。世界がリアル過ぎて採れなかったという声も。8点「いち抜けた」、所謂「年賀状仕舞い」の句は昨今マンネリ化しているが、この句は「数え歌」調の表現が好感を得た。一方、「年賀状を出したことがない」、「子供が年賀状を出したいと言い始めた」など、年代によって「年賀状」観はかなり違った。6点「餅焼くや」、採った人は「暗き台所」に嫁の気持ちがよく見えた。分かり過ぎ、との声も。5点「微睡みの」、布団から抜け出せない寝起きの情感。「朝」の暗喩にエロスありと言う人に対して、否、エロスと言うなら「花を蹈し草履も見えて朝寝哉 蕪村」だろうとも。同「知らないと」、「こたえ」た後の「放心」や「後悔」を感じた人、「鮮やかな嘘」と感じた人、いずれにせよドラマがある。同「忘れたき」、「忘れたきこと」が積雪の底に「根雪」となって凍っていくのか、「あと少し」が難しい。同「加留多切る」、「歌留多」も「当て字」だし、本当のことも「秘密」。上手く「切」っている(まさかトランプ氏への揶揄?)。同「複写紙の」、ぺらっとした待春の触感。静けさとノスタルジー。カーボンコピーの一回性。「質感」と言ってしまってよかったのか。
(記:「海原」小松敦)

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