2024年4月は4/20(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:もしもあなたが中高生や大学生から「俳句のどんなところが楽しいですか?」
と聞かれたら何と答えますか?〈任意回答・順不同〉 結果はこちら
句会報:2024年4月「海原オンライン句会」
【高点句】(5点以上)
手紙書く浅蜊が砂を吐くように 夏谷胡桃
なみだより少し明るいしゃぼん玉 宮下由美
少女梳く春の退屈はさらさら 花舎薫
かさぶたにふれて四月をたしかむる 小西瞬夏
犬ふぐりひらがなだけの約束を 男波弘志
春疾風ブルーシートは嗚咽する 木村寛伸
相槌を打ってくれさう黄水仙 長谷歌子
春愁や本から落つる正誤表 原洋一
リラ冷えや天井高き駅舎の灯 坂川花蓮
寡黙なる人のつぶやき蜆汁 坂川花蓮
春蝉やシュレッダーから紙あふれ 坂川花蓮
雁帰るベンチに老人ひとりづつ 菅原春み
北窓を開くくすんでいて平和 宮下由美
【参加者各一句】(高点句以外)
アカペラで哭く六地蔵山桜 石鎚優
筍煮る母のもやもやのレシピ 奥山和子
涅槃西風肉噛む義母ののどぼとけ 小野こうふう
オブラートに包む伝言余花の雨 黒済泰子
さくらやさくらみんな遠くにゆきました 田中信克
シャンプーのつめかえ大真面目よ立夏 玻璃
遠霞はじめて兄をおぶった日 藤田敦子
土筆野や年々ビルの生えてくる 姫
つぎつぎに木からでてゆく春の昼 平田薫
遠桜ビル窓拭きのロープ揺れ 比良山
鳥の恋いのり覚える十六歳 増田暁子
その中のひとつは鬼火花篝 矢野二十四
塔のごとナプキン置かれ蝶の昼 和緒玲子
性癖を剝がすとのたり春の海 榎本祐子
名画座の三本立ての春田かな 大渕久幸
フラループ少女の腰に春が舞ふ 加瀬みづき
永き日の圏外にいる十五歳 小松敦
砥部焼の小皿母様の花菜漬 樽谷宗寛
さらばとかÇava?とか桜降る下で 柳生正名
自ずからさみしくひらく桜漬 山下一夫
貌よ鳥化粧をはがす前とあと 石川まゆみ
鬼瓦の家紋おろして春暮れる 石橋いろり
よき友と渋谷に昭和見つく春 伊東リハじ
老桜暴れシニアと呼ばれましょう 桂凜火
オカリナの音色に遊び風光る 川嶋安起夫
花屑落花踏んで踏んで永田町 さかいまゆみ
帰という字うれし哀しや鳥かえる 塩野正春
窓叩く蜂の羽音の勇ましげ 妙子
鳥曇りガザの子どもら飛んで来よ 田中怜子
朧月資源置き場の「花とゆめ」 満葉
全身が水になってハタと落ち 葛城広光
誰が見るガザ沖赫き春落暉 野口佐稔
囀りがうるさい大字一人暮らし 坂内まんさく
◇
43名、うち初参加6名、海原以外から14名。句柄も参加者キャラも色とりどりで賑やかだった。
さて、15点「手紙書く」、書き手の様子や手紙内容を彷彿とさせる。異物を吐き出す浅蜊の生生しさと手紙を重ね、そこにリアリティを感じた人は採った。「書く」は人間に引きつけ過ぎとの意見も。10点「なみだより」、涙もしゃぼん玉も周囲を映し込んで光り消えてゆくが、しゃぼん玉は明るく軽く、気持ちが楽に。それを当たり前、感傷的で甘いと思った人は採らなかった。9点「少女梳く」、髪も退屈も「さらさら」に共感できた人は採った。既存の少女性だ(一昔の)とも。同9点「かさぶたに」、治りかけた生傷に四月の再起動感を覚えた人多数。「木肌」の「かさぶた」との解釈も。この場合の季語「四月」は陰暦三月か?と問題提起あり。文脈にも依るが現代俳句では、各々の「四月」感で詠み・読めば良いのではないかとの提言あり。6点「犬ふぐり」、幼い約束にほのぼの。「〈を〉切れ」の余情。同「春疾風」、正に「嗚咽する」能登震災を偲ぶ。同「相槌を」、素直とも素直過ぎとも。同「春愁や」、「正誤表」は悲しすぎ、活かすなら他の季語をの声。5点「リラ冷えや」、景がよく見える。「寡黙なる」、呟きは汁の底の蜆のごと。「春蝉や」、生命力溢れる。「雁帰る」、雁の群れと孤独な老人たちとのギャップ。シュールでリアル。「北窓を」、春なのに、平和に驚く、末法の時代感。(記:「海原」小松敦)