「海原オンライン句会」11/18(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:「俳句関連のお気に入りの本やお薦めの本」 結果はこちら。
句会報:2023年11月「海原オンライン句会」
【高点句】(5点以上)
絵も本もピアノも売りて日向ぼこ 大浦ともこ
秋の空土偶笑って掘り出され 夏谷胡桃
「ひやっとしますよ」平和な国の心電図 野口佐稔
鶏頭がお告げのように立っている 榎本祐子
木の実ふるゆるき傾斜のすべり台 宮下由美
どこからが自由不自由マスク取る 桂凛火
エレベータ全員無言冬に入る 菅原春み
母の黙あつめて冬の入日かな 田中信克
夜長し水槽に立つ亀の腹 瑞穂
【参加者各一句】(高点句以外)
大原女の足の速さよ夕時雨 樽谷宗寛
老犬が瞬きをする金木犀 平田薫
今もゲルニカ笑って生きてる柘榴の実 増田暁子
鼻先を冬眠前の毛物臭 石川まゆみ
軒裏に日の斑ゆらぐや池は秋 伊東リハじ
古楽器の響きの如く水澄めり 川嶋安起夫
枯蟷螂己の影にしがみつき 佐藤詠子
秋晴れや物干し竿の雨の跡 満葉
吹かれたる散りたる狂ひ花の白 看做しみず
木葉木菟見てから父母ばかり詠む 柳生正名
口づけはかるく黄落降り止まぬ 安部拓朗
古民家に農具転寝や五倍子の花 小田嶋美和子
冬日和たんぽぽ薬局に石鹸 奥山和子
鏡では二人になっている話 葛城広光
神無月そろそろ異議を申したい 木村寛伸
花束は一斉に枯れ日短 小松敦
秋の旅トイレ惑わすピクトグラム 塩野正春
阪神日本一今日の車庫入れパーフェクト 谷口道子
冬至五時都市に始まる第二幕 野口思づゑ
じじばばの長き抱擁吾亦紅 石鎚優
北欧の隙なき景色いわし雲 小野こうふう
小鳥来る体育すわりに畳まれ子ら 藤川宏樹
猪が行く逃げ口上は嫌いなり 矢野二十四
小春とは自転車に乗るガスタンク 大渕久幸
寒山拾得になったつもりの秋一日 坂内まんさく
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SNS等をきっかけに「海原」ではない方の参加も増えてきた。「海原」では見かけないような違った作風が吹き込み、お互い刺激になればと思います。
今回は34名百二句の参加。最高点は10点「絵も本も」、売却後のがらんとした空間には心の空間をも感じさせる。終活の断捨離、いや引越しだ、いやいや、「も」で畳みかける思いの深さから、亡き人の遺品整理に違いない、と解釈が様々。解釈によって「日向ぼこ」の気分が変わってくるのも味わい深い。採らない弁は、よくある断捨離風景で心動かず。9点句「秋の空」、笑っているのは土偶かそれとも掘っている人か、の議論あり。どちらともとれる。太古からの見守り、祈り、安心感、人類への希望、嘲笑など各々自由に鑑賞。「秋の空」がやや雑では、との声も。8点句「ひやっとしますよ」、電極の肌触りを意味するだけでなく、心電図の波形に恐怖や驚きを感じる、その波形を見てみたい。上五に「たくらみ」を感じるが良し、平和ボケを皮肉る句の多い中これは秀逸との声あり。7点句「鶏頭が」、鶏頭に「お告げ」を感じ取れた人は採り、感じ取れない人は採らない句。鶏頭に「祈祷師の杖」をイメージした人もあり。6点句「木の実ふる」、採った人は「ゆるき傾斜」に穏やかさ優しさを感じている。「ふる」「ゆる」「すべり」の音韻が心地よさを醸し出す。5点句「どこからが」、マスクだけで現在の生活風景をよく描き出している。「取る」がやや分かりずらいとの声も。「エレベータ」、「冬に入る」が季節の急激な変化に引きこもりがちな気分を表している。マナーとしての無言を当たり前に感じた人は採らず。「母の黙」、上五に感情移入し易い。暗いという声も。「夜長し」、情景がよく見える。「夜長し」の斡旋に賛否あり、夜長だからこそ亀の腹を見るに至ったのだとの意見に感心した。
句の鑑賞において、読者それぞれの経験や状況の中で感じ取ることは自由でよいと思うし、聞いていて面白いが、書いていないことをあまりにも深読みしすぎじゃないかとの意見もあり、印象的だった。
(記:「海原」小松敦)