WEB版『現代俳句』(現俳ウエブ)2025年1月号「現代俳句管見記」より抜粋
「造型俳句論」と「生きもの感覚(アニミズム)」のひみつ 小松敦
以下、「1.はじめに」のみ転載します。
続きは「現俳ウェブ」2025年1月号でご覧ください。
「造型俳句論」と「生きもの感覚(アニミズム)」のひみつ 小松 敦
超結社のオンライン句会などで、参加者から金子兜太の「造型俳句論」や「アニミズム」を知りたいという声がちらほらある。この機会に筆者の理解を簡単に整理しながら、思うところを述べてみたい。読者のご参考になれば幸甚である。
1.はじめに
まずはじめに本稿のポイントと結論を以下にまとめる。後の章で「造型論」と「生きもの感覚(アニミズム)」をそれぞれ概説する。
【造型論】
・「造型論」は兜太俳句の「方法論」であり、「方法」とは「手法」(how)と「態度」(what for/why)の総合
【手法】
・兜太が一生ブレずに伝えようとした「手法」とは「こころをつたえる工夫(詩は叙情)」
【態度】
・「手法」を駆動する動機であり、行動に直結した(肉体化した)価値観や考え方(思想)、生活意識(生き方)
・兜太の「態度」の中心は「「人間」への関心」、その根底に「戦死者にむくいる生き方」
・兜太は成長し社会状況は変化する中、態度の重点も変化する
例:「社会」の中の人間、「定住漂泊」する人間、「衆」としての人間、「生きもの」としての人間
【生きもの感覚(アニミズム)】
・上記「態度」を支える世界観=「生きもの感覚(アニミズム)」
・脱人間中心主義:人間/非人間の二元論的な世界認識ではなく、人間も社会も非人間もみな同じ自然であり関わり合って生きているという関係論的な世界認識
・秩父の産土に育まれ、頭で考えるより先に体にしみついていた世界観(原郷観*1)だが、後年一茶に触れて確信
【結論】
1)「造型論」と「生きもの感覚(アニミズム)」は繋がっている。「造型論」を支える「態度」の土台が「生きもの感覚(アニミズム)」。
「生きもの感覚(アニミズム)」を以て「物の微」に触れ「情の誠」を今日に回復することが、兜太の求める「造型」だった。
近代的で人間中心主義的な態度から抜け出せないまま、人間も地球も様々な危機に直面している現在、兜太の「造型論」と「生きもの感覚(アニミズム)」のエッセンスは俳句や文学の領域を超えて現代に生きる智慧となるはず。兜太をもっと「真剣に受け取り(*2)」、その可能性を探っていきたい。
2)兜太はアーティストとして、ステロタイプな価値観に鎧われることを面白いと思わなかった。〈今後の俳句も、どしどし、いろいろな工夫がほどこされ、いろいろな表現方法、いろいろな態度、いろいろな姿勢が導入されてしかるべきだ、とおもっているのです(*3)〉、とのことだ。
一人の作家の中に様々な「方法」が併存することも当然として、「造型論」の次なる俳句の「方法論」とは、どのような「手法」と「態度」になるのだろうか。そういうことを俳句を作りながら考えていきたい。
以下、2.造型論、3.生きもの感覚(アニミズム)、と続きます。
続きはこちらで→「現俳ウエブ」2025年1月号「現代俳句管見記」