『海原』No.71(2025/9/1発行)誌面より
2025年夏【第8回】海原通信俳句祭《結果発表》(一部抜粋)
第8回を迎えました「海原通信俳句祭」。参加者数は計91名。出句数は計182句でした。大勢の方のご参加、あらためまして厚く御礼申し上げます。
参加者全員に出句一覧を送付。一般選者の方々には7句選(そのうち1句特選)、23名の特別選者の方々には11句選(そのうち1句特選・10句秀逸)をお願いしました。
以下、選句結果、特別選者講評となります。
(まとめ・宮崎斗士)
※詳細は「海原」誌面をご覧ください(以下上位句発表部分のみ掲載)。
☆ベストテン☆
《16点》
君の死後青葉のこんなにも硝子 宮崎斗士
《15点》
夏の夜や星を一針づつ刺繍 大髙洋子
螢袋こどもの匂いしない町 三好つや子
白南風や母という字は舟に似て 望月士郎
《13点》
素足とはやさしく介護する決意 佐々木宏
あとがきも前書きもなく酷暑 鱸久子
《12点》
AIかるく喋るよ黒い雨の夏 高木一惠
万緑に碇泊のごと身を浸し 高橋明江
有り丈の過去を背中に蝸牛 矢野二十四
少年は乾き易くて麦の秋 横地かをる
◇
【11点句】
ハモニカのような五月の妻子です 大沢輝一
修復師ががんぼのばらばらの脚 鳥山由貴子
真水よりさびしきものに蛍烏賊 茂里美絵
【10点句】
トマトもぐいつもの朝が壊れそう 小林育子
くちなはにならむ老獪ストレッチ すずき穂波
角張ってゆく地球です海月恋う 嶺岸さとし
【9点句】
スクラムの真下蟻塚くづれをり 石川まゆみ
満月や今日は誰とも喋ってない 河西志帆
八月がゆくむらむらと影法師 野﨑憲子
夢をみる力あります茗荷の子 三木冬子
生と死の結緒かそけし蟇交む 若森京子
【8点句】
時間とはヒトの決めごと蝸牛歩む 赤崎冬生
短夜やなぐりたい句を選び出す 石川まゆみ
はくひょう
薄氷の停戦今日は夏越しの祓 長谷川順子
瞑想や兜太他界の夏野行く 船越みよ
亜流として歩むとしてもサングラス 松本千花
【7点句】
ビヤホール愉快な父と待ち合わせ 安藤久美子
波音のひとりごころや梅雨に入る 伊藤淳子
夏市場きちんと魚が眠っていた 大沢輝一
移住して蜂飼となる自由眩し 篠田悦子
すれ違う人の速さよ夏の駅 清水恵子
天道虫宇宙に上下左右なし 菅原春み
ででむしや棲むとはゆっくり息すること 宙のふう
かき氷「僕的には」と猫抱く君 竹田昭江
揮発するごとく山野を夏つばめ 松本勇二
【6点句】
今日の日を加速してゆく夏野かな 安西篤
おおらかな烏揚羽と行く古墳 安藤久美子
赤ちゃんの溢れる匂い青野原 北上正枝
かんかんと蝶兜太の慕情ひらひらひら 十河宣洋
アイスティーことり答えの無い問いを 藤野武
クレマチス棺はヴィトンにして下さい 峰尾大介
青林檎さくっと潔きけじめ 森由美子
時間とうしつこい追手夕涼み 森由美子
みどり夜を寝て爬虫類のひんやり 柳生正名
真葛原一羽がわたしを見ておりぬ 山中葛子
【5点句】
ああむしょうにおやじにあいたいひ 阿久沢長道
濃紫陽花姉は半年分の愚痴 石川青狼
羽抜鶏こ米ここ米こここ米 石川青狼
蝸牛息整えれば飛べるやも 石橋いろり
マングローブと砲火の記憶遠花火 榎本愛子
いま崖を滑る感覚つばき落つ 北村美都子
昼寝の子まるで戦を知らぬ兵 木村寛伸
白桃と目を閉じている白猫 黒岡洋子
来た道を探して戻る夏の空 小松敦
産土に座り直しの天道虫 佐藤詠子
正論がまた風になる盆の席 佐藤詠子
眼だけ出しママチャリ急ぐ炎天下 島村典子
夏椿年をとらない死者の声 菅原春み
あめんぼ走る晩学のおいらのやうに すずき穂波
たんぽぽ野ひとり老いふたり老い 十河宣洋
青天井わが源流は奥秩父 舘岡誠二
からすうりの花の謎掛け解けぬまま 平田恒子
朝寝かな誰もどこにも居なくなる 深山未遊
あっさりと力が正義 地球夏 武藤幹
さくらんぼ無知の安らぎ噛みしめる 横田和子