青森県近代文学館にて「俳人・京武久美」追悼展 齊藤しじみ

『海原』No.60(2024/7/1発行)誌面より

青森県近代文学館にて
「俳人・京武久美」追悼展 齊藤しじみ

 去年七月に八七歳で亡くなった「海程」元同人の京武久美さんの追悼展が出身の青森市の青森県近代文学館で五月二四日から七月二四日まで開かれている。
 会場には京武さんの主に中学・高校生の時の俳句が自筆の短冊・色紙・パネルなどで紹介され、展示資料は三七点に上る。当時の校内雑誌・文集・句会報・新聞・俳句誌もあり、同級生の寺山修司に先行して開花させた早熟な才能とともにその足跡を知ることができる。
 目を引いたのはアルバム写真も含め初めて見る実物の資料が目立ったことで、これは今年四月に中高時代の同級生が当時の資料一式を寄贈したことも一因のようだ。
 私はこれまで中高時代の作品しか注目してこなかったが、昭和二九年の俳句誌「青年俳句」に掲載の句を見て、原因は寺山にあったものの、高校を卒業した年に京武さんが寺山に辛辣な感情を抱いていたことに驚かされた。

  どこかでくさめ見よ天才と言ひし男
  右頬の巨きな虚栄きりぎりす
  天才の背後へ背後へ秋三日月

 今回の追悼展で私にとって最も心に残ったのは二七歳の時の句である。

  雪解川逢えば遠くにわが死あり

 「友情は偶然一緒にうまれあわせた哀歓」という作家・埴谷雄高の名言があるが、戦後間もない青森で京武さんが偶然同級生になった寺山との間で化学反応のごとく次々に生み出した十七文字の青春も哀歓に満ちている。

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