『海原』No.72(2025/10/1発行)誌面より
第7回 海原賞
【受賞者】
三枝みずほ
【選考経緯】
『海原』2024年9月号(61号)~2025年7・8月合併号(70号)に発表された同人作品を対象に、選考委員が1位から5位までの順位をつけ、選出した(旧『海程』の海程賞を引き継ぐかたちで、海程賞受賞者は対象から除外した)。
得点の配分は、1位・5点、以下4・3・2・1点とした。集計の結果、下表のとおり、三枝みずほへの授賞を決定した。

【受賞作品抄】
少年の雨 三枝みずほ
平和のつづき託されている夏帽子
ハンカチにキリストくるむ雨の昼
雲へ話して麦わら帽子落っこちて
どの白も拒む夏雲が正面
水掬ふかたち夏蝶放ちけり
解いてゆく数式滴りますように
八月の全少年を野へかえす
じいちゃんに少年の雨ずつとある
波打ち際に万物の骨星飛べり
十月の光綴じたる初版本
秋冷の夜の骨格湾岸線
絶版を刷るように星流れけり
ペンが骨軋ませてゆく自由帳
開戦日最前列の椅子が空く
てのひらはあなたへあげる開戦日
冬薔薇崩れ鉄塔のみの町
鷗出版社青空刷り上がる
あとがきに鼓動のありて春兆す
さくらひとひらどちらかは空っぽの手
さくらさくら黙読が声になる
【候補作品抄】
ゆっくり 小松敦
袖口に蝶一頭の着地感
お玉杓子先に行ってるすぐに行く
野分だつ時刻表にはない電車
入口は明るい出口秋の蝉
テーブルの上今朝のまま十二月
少し春よく隣り合う席の人
繭ごもる鎮痛剤の溶けてゆく
回らない鍵を集めて枯木星
裸木になるまで空を見たりけり
鯨跳ぶようにゆっくりピアニスト
葛湯吹く 河原珠美
風が見え屈託という粽解く
茅花ぼわぼわ遠くに行ってしまう叔母
短夜やラピスラズリという遺品
秋陽透く自傷のように旅鞄
曼珠沙華わたしが私である理由
小春かなちょっと歪な塩むすび
鵙高音SNSって鵺ですか
淋しさの擬態のように葛湯吹く
なりゆきで万歳三唱ミモザ咲く
工事中なら竜神さまはお花見に
生命線 藤田敦子
生まれたての傷を見ている花の下
愛でておこう生命線に降る桜
卒業すやがて点描となる明日
いつまでも犬が見送る休暇明
不在なる桐が咲いても不在なる
いつからか昼を眠りて月夜茸
一瞬に交す耳うち小鳥来る
銀杏焼くボーナストラックのような夜
少しだけ私を休む夕刈田
半開きの心で見上ぐ冬北斗
ドリームタイム マブソン青眼
ポケットに石一個空青し
魔物死んで天使も死んで焚火
もう地球にヒトいない露光る
蝶二頭とその影のみの地球
精子めく稚魚一匹や大河
石と石が交尾し合って西日
人類が遺した岩にセキレイ
地名消え砂丘に犬の頭骨
雪ひとひら死ねばひとひら生まる
白い空からもっと白い雪
私の話 奧山和子
ずっと軽くてずっと友達猫柳
紙めくる詩の本ならば蝶の羽根
マダナニカカクシテイルノカ桜餅
具体的戦略として蛇苺
蛍飛ぶ寂しい闇を呼び寄せて
鰯雲形而上学的鬼ごっこ
金木犀闇に闇と名を付ける
りんご飴純粋というコーティング
拘りの一部狐火かも知れぬ
冬満月私は私の話をする
【海原賞選考感想】
■安西篤
①三枝みずほ ②伊藤巌 ③小松敦 ④田中信克 ⑤董振華
昨年一・二位に推した横地かをる、望月士郎が共に受賞したので、今年は残る三枝みずほ、伊藤巌、董振華の三人に、新たに小松敦、田中信克を加え、五人同列の視点から検討し直し、右のような結果となった。
一位三枝みずほは、昨年次点の高評価を得ており、地域風土にとどまらぬ彫りの深い知的感性の物語性を、出色のものと見ていたので、文句のないところ。
顔ひとつ忘れ白日傘ひらく
あとがきに鼓動のありて春兆す
二位伊藤巌は、老々介護の現実を直視しつつ、生きる命の詩的昇華を抑制のきいた映像で情感豊かに表現した。
残菊のそこだけに陽が過疎の村
出水痕幾つ数えて神の旅
三位小松敦は、現代の日常感覚でモダンな映像を構築、ジャブのような動画像を句に散りばめる新感覚派。
鯨跳ぶようにゆっくりピアニスト
袖口に蝶一頭の着地感
四位田中信克は、社会性を句の基底部に据えつつ、現代の問題意識をテーマ性として捉え、生活感に根差す存在感を追求している。
AIがそっと見ている神の留守
過疎の村遅日三百六十度
五位董振華は、漢詩調の大陸的心象を日常実感の中に溶け込ませながら、独特の漢俳詩ともいうべき世界を拓きつつある。
万籟や短夜の扉をひらくたび
日記果つ一騎の白駒駆け抜けし
ほかに、男性では楠井収、小松よしはる、齊藤しじみ、女性では北上正枝、榎本愛子、石橋いろり、黒岡洋子、木下ようこ、河西志帆、大池美木、伊藤幸、菅原春み、竹田昭江、奥山和子、村本なずな、藤田敦子、森由美子等多士済々。
■石川青狼
①マブソン青眼 ②佐々木宏 ③三枝みずほ ④田中信克 ⑤董振華
今年度も、マブソン青眼の明確なテーマへの溢れる詩魂の結晶を一位に推す。〈土偶を見る妻を見ている月夜〉〈岩に座し億万の日の余熱〉〈精子めく稚魚一匹や大河〉など詩情豊かに表現し、俳句詩形にも独自の挑戦をしているその創作力がなんとも魅力であった。
二位には佐々木宏の〈焚火する繋がりたくない若者と〉〈風花や家では死ねぬ世となれり〉など現代社会を炙り出す俳味が心地よく厚みのある作品群であった。
三位の三枝みずほは〈ペンが骨軋ませてゆく自由帳〉〈てのひらはあなたへあげる開戦日〉など、感性豊かな表現は新鮮であり、この一年充実した作品群であった。
四位の田中信克は〈鉄骨剥き出し黒南風がやってくる〉〈青芒片目の鬼は片目で哭く〉など社会性を内包しつつ、自らの傷みの形を重くれることなく表現していた。
五位の董振華は〈一人居も世渡りと言う額の花〉〈日記果つ一騎の白駒駆け抜けし〉の静かな抒情の表出が好感であった。
選考外となったが、小松敦、片岡秀樹、桂凜火の活躍が頼もしかった。さらに清水茉紀、河西志帆、藤田敦子、伊藤幸、北條貢司、たけなか華那等に注目した。
■武田伸一
①三枝みずほ ②加藤昭子 ③奥山和子 ④河西志帆 ⑤楠井収
あとがきに鼓動のありて春兆す 三枝みずほ
春光のくすぐり弱みならあるわ 加藤昭子
眠りという大切な無駄桐の花 奥山和子
レインコート濡らさぬようにして歩く 河西志帆
働いて働いて餅焦がしけり 〃
つまるところ風呂吹食って不貞寝して 楠井収
これに続く者として、小松敦、佐々木宏、桂凜火、松本千花、河原珠美、佐々木昇一、三浦静佳、船越みよ、丹生千賀、伊藤巌、田中信克を挙げておきたい。
■舘岡誠二
①船越みよ ②齊藤しじみ ③三枝みずほ ④河西志帆 ⑤十河宣洋
戦後八十年。当時自分は五歳。金子兜太先生がトラック島での軍務をとかれて復員し、戦後俳句界の第一人者として活躍された思いを引き起こし、選考した。
選考した五名への感想と一句を添えさせていただく。
船越みよは今は亡き武藤鉦二のもとで俳句の扉を開き練達。第六回「海原金子兜太賞」に輝いた。この一年間秋田の風土と生活に根ざし、俳味の濃さを大切に作句した。
無人販売母のまなざしして案山子
齊藤しじみは日常の一コマを格調づけて親和感を持てる作品を多くつくり、作句へのひたむきさを強く感じとれた。
兜太忌や経木はみ出す握り飯
三枝みずほは前回三位であった。たしかに毎月の作品を味読して、新しい感覚が息づいて、心の内奥を生かした巧みさ、真剣さが見えて好感を持てた。
開戦日最前列の椅子が空く
河西志帆をこれまでも推して来た。常に前向きな姿勢で実力を増している。今後も大いに期待できる作者といえる。
能登や能登まだまだ置きざりの蕨
十河宣洋は北海道の作者。長い句歴のなかで一歩一歩階段を登り、気力十分にして作句を持続、偉いと思う。
素っ気なく酒酌む鯨のような奴
■田中亜美
①三枝みずほ ②藤田敦子 ③田中信克 ④小松敦 ⑤董振華
三枝みずほを引き続き推す。前回に比べて句の内容がさらに広がり、硬軟自在な韻律とレトリックへの挑戦が感じられる。〈解いてゆく数式滴りますように〉〈ストレッチャー夏蝶真下より見え〉〈絶版を刷るように星流れけり〉〈開戦日最前列の椅子が空く〉。
藤田敦子の端正な句柄。〈睡蓮の闇深くして泥の鯉〉〈不在なる桐が咲いても不在なる〉〈かつて歩哨枯葉の音にふりかえる〉〈卒業すやがて点描となる明日〉。
田中信克の社会や歴史への問題意識。〈煙ひとすぢ七十九回忌目の空に〉〈過疎の村遅日三百六十度〉〈容れものとしての人間桜散る〉。
小松敦は年間を通して好調。〈窓全部開ける青年鵙日和〉〈笑い止むように遠くへ秋の虹〉〈柏手の人等霞んで入れ替わる〉。
董振華の〈嘆きの壁に秋の残照 しばし〉〈日記果つ一騎の白騎駆け抜けし〉も印象鮮明。『語りたい俳人』も力作だった。
河原珠美、並木邑人、マブソン青眼は「海原」を代表する作家として別格の感。河西志帆、ナカムラ薫、船越みよ、三浦静佳、佐藤詠子、大池美木、川崎千鶴子、桂凜火、菅原春み、岡田奈々、齊藤しじみ、小松よしはる、高木水志にも注目した。
■野﨑憲子
①マブソン青眼 ②三枝みずほ ③小松敦 ④桂凜火 ⑤董振華
敬愛する数多の先輩を別格とし、今回も私よりも若い方々を推させていただく。
本年の一位は、マブソン青眼。〈岩に座し億万の日の余熱〉〈人類が遺した岩にセキレイ〉〈雪ひとひら死ねばひとひら生まる〉。俳壇でも著名な彼に今更感はあるが、迸る俳句愛と、師の目指した「俳諧自由」の体現。
二位には、三枝みずほ。〈解いてゆく数式滴りますように〉〈絶版を刷るように星流れけり〉。日常を紡ぎ出す、しなやかで詩情溢れる言葉の斡旋力も増強。
三位は小松敦。〈次の世に孵化する眠り秋の土〉〈袖口に蝶一頭の着地感〉。作品や俳論に漲る表現の進化。
四位には桂凜火。〈しずり雪けものの脚の硬い爪〉。感性の豊かさに加わる円熟味。
五位は董振華。〈日記果つ一騎の白駒駆け抜けし〉。韻律美の健在。
そして、河原珠美、竹本仰、伊藤幸、新野祐子、豊原清明、高木水志、奥山和子、藤田敦子、岡田奈々、近藤亜沙美、等々。混迷を極める世界へ愛語溢れる俳句を!「海原」発、俳句新時代の到来を祈念しつつ。
■藤野武
①奥山和子 ②三枝みずほ ③河原珠美 ④高木水志 ⑤佐々木宏
奥山和子を一位に推す。感受と表出の深まり。〈水無月の姿勢のいい月もてあます〉〈蛇の衣脱ぎっぱなしの疲れかな〉〈月あればいっそ冷たき空の旅〉〈泣けば空っぽ春泥に踏み込んで〉。
二位は三枝みずほ。若々しく瑞々しい叙情。〈どの白も拒む夏雲が正面〉〈金魚そっと握っておりぬ夕べかな〉〈冬青空手のひらが先に泣く〉。
三位の河原珠美の明るく軽やかな感性。〈風が見え屈託という粽解く〉〈秋陽透く自傷のように旅鞄〉〈狐火やドロップみたいな夢を見る〉。
四位は高木水志。粗削りだが潜在する熱量が魅力。〈身の内の火球をさらう野分かな〉〈稲つるび明日香の村を編み渡る〉〈初蝶が痛みにずっと付いてくる〉。
五位に佐々木宏。日常を軽々と描く。〈失言しそう毛虫たくさん見てしまう〉〈あざむけり舌十五夜の明るさで〉〈賀正とかくせ字で強く書けば遺書〉。
ほかに、丹生千賀の自在。桂凜火の情感。さらに、川崎千鶴子、木下ようこ、ナカムラ薫、井上俊子、大池桜子、たけなか華那、西美惠子、山本まさゆきに注目。
■堀之内長一
①河原珠美 ②河西志帆 ③三枝みずほ ④藤田敦子 ⑤小松敦
新鋭が後ろに控えているなかで、ベテラン勢が黙々と自身の日常詠を深めている。一位に推した河原珠美の感性の自在さはいつも変わらない。〈風が見え屈託という粽解く〉〈秋陽透く自傷のように旅鞄〉〈赤トンボ工場はもう昼ごはん〉「屈託という粽」の喩えに驚いたのだが、はるかに粽の起源を考えてしまう。一方で、〈鵙高音SNSって鵺ですか〉と現代の怪しい世相に眉をひそめる。
河西志帆の日常は、少々特別な環境のなかにある。それでも、日常の中から詩をつかまえるというスタンスは河原珠美と同じである。〈レインコート濡らさぬようにして歩く〉〈くたびれた画鋲が落ちてより真夏〉〈働いて働いて餅焦がしけり〉イロニーの隠し味が効いていて、もはや河西調と呼びたい世界になった。
感性のおもむくままに創る喜びを伝えてくる三枝みずほ。ぐいぐいと読むものを引っ張っていく。〈雲へ話して麦わら帽子落っこちて〉〈鷗出版社青空刷り上がる〉〈さくらさくら黙読が声になる〉豊かな詩質に期待は大きい。
藤田敦子の日常は苦しみもあるはずだが、自分と向き合う姿勢は確かである。〈生まれたての傷を見ている花の下〉〈少しだけ私を休む夕刈田〉心情を素直に詠んで、かすかに悲しみが滲む。
不可思議な俳句(私から見れば)を生み出す小松敦。と思っていたのだが、抒情の表現の現れがもう違っているのだとある時気づいた。〈野分だつ時刻表にはない電車〉〈テーブルの上今朝のまま十二月〉日常に潜むかすかな陰翳や気分を詠んで今を描く。この先にどんな景色が見えてくるか、楽しみである。
■前川弘明
①三枝みずほ ②船越みよ ②加藤昭子 ④すずき穂波 ⑤藤田敦子
結局は、前回受賞者の次の順位に並んでいた人達を推す結果になった。この人たち自身の作品が前回に劣らず良かったということであり、選考をする者としても嬉しいことであった。
三枝みずほは、日頃の生活を大切にしながら、広く世間に触れていようとする優しい視線が見える。
平和のつづき託されている夏帽子
太陽とぶつかる肩や少年期
掬われて金魚の水の古びたり
船越みよは、やわからくて何気ないような表現に込められた魅力。
三月のうずうずしたる尾骶骨
足跡を消して人恋う秋の浜
釣瓶落し波の落して古本屋
加藤昭子は、素直な眼差しである。その感覚は健在であった。
春光のくすぐり弱みならあるわ
遠花火会いたい時は目を瞑る
秋風に不意を突かるる笑い皺
ほかに、奥山和子、河原珠美、竹本仰など。
■松本勇二
①河原珠美 ②松本千花 ③藤田敦子 ④木下よう子 ⑤三枝みずほ
この一年間チェックした数を拾い上げたが、昨年同様の順位となった。
河原珠美の明るくて奔放な書きぶりは健在だった。そのまま句が終わらずいつもどこかに展開していた。〈茅花ぼわぼわ遠くに行ってしまう叔母〉〈赤トンボ工場はもう昼ごはん〉〈工事中なら竜神さまはお花見に〉。
松本千花は油断できない。独特の感覚から出てきた言葉や情景は鮮度抜群だ。〈反省すホットドックのレタスほど〉〈クリオネの頭パカッと春を喰う〉
藤田敦子の冷静な視線から現れる世界は、現在の人たちが忘れかけているものを思い出させてくれた。〈木犀匂う幸せはうっすらとかなしい〉〈半開きの心で見上ぐ冬北斗〉。
木下よう子は、父上の句もさることながら、句のひっくり返し方に冴えがあった。〈メバル・カサゴ精神的に強くなる〉〈もう喋らなくなつてしじみ蝶かな〉。
三枝みずほは、同一ワードの連作はあまり賛成しないが、それでも十分に弾けていた。〈解いてゆく数式滴りますように〉〈冬青空手のひらが先に泣く〉。
チェックの多かった作者として、河西志帆、奥山和子、ナカムラ薫、金並れい子、佐藤詠子、船越みよを挙げておく。
■山中葛子
①三枝みずほ ②すずき穂波 ③小松敦 ④董振華 ⑤松本千花
一位の三枝みずほ〈風は木を越え思春期の君よ〉〈八月の全少年を野へかえす〉〈絶版を刷るように星流れけり〉など、ことに毎号作品にはテーマ性があり、社会と向き合う心象風景はいよいよ佳境に入って瑞々しい。
二位のすずき穂披〈葬送の果ての麦秋レゲエかな〉〈思想家ゐて夢想家ゐてわらふ紫陽花〉〈人間になりたくはない案山子翁〉の、人間模様と結ばれた、絶妙な映像力が冴えている。
三位の小松敦〈笑い止むように遠くへ秋の虹〉〈鯨跳ぶようにゆっくりピアニスト〉〈花曇ときどき木漏れ日の震度〉など、遠近法を思うはるばるとした心象の見事さ。
四位の董振華〈行く春や一気に長江を渡りゆく〉〈落日のとまどい山に置く晩夏〉〈日記果つ一騎の白駒駆け抜けし〉の、大陸的なスケールの抒情絵画のような豊かさ。
五位の松本千花〈唐がらし日にち薬というものを〉〈クリオネの頭パカッと春を喰う〉〈伸びしろを逆算します春氷〉の、伸びしろたっぷりな着想の妙味は期待そのもの。
マブソン青眼は別格とさせて頂いた。
ほかに、田中信克、河原珠美、ナカムラ薫、河西志帆、黒岡洋子、たけなか華那、平田薫、竹田昭江、桂凜火、船越みよ、藤好良に注目。
■若森京子
①三枝みずほ ②小松敦 ③桂凜火 ④奥山和子 ⑤三好つや子
いつも瑞瑞しい作品に惹かれる三枝みずほを一位に。〈絶版を刷るように星流れけり〉〈てのひらはあなたへあげる開戦日〉。
二位の小松敦の若者らしい日常の切り口、他方面でも活躍した。〈冬銀河あらすじのように旅をする〉〈鯨跳ぶようにゆっくりピアニスト〉。
三位に言葉の硬さがとれ独自の世界を情的に表現した桂凜火。〈サバンナに夢ライオンにすこし雪〉〈鶏頭の朱は雄叫びを老女ひとり〉。
四位に社会性を含み詩情豊かにこつこつと書いてきた奥山和子。〈冬銀河仮想本屋の棚探す〉〈巻貝の開けっ放しの批判聞く〉。
五位の三好つや子は言葉の斡旋に優れ内面を掘り下げた。〈目撃者の顔になってる梅の青〉〈いちじくに蟻群れている火宅かな〉。
昨年入れた董振華は現代俳句協会賞の特別賞受賞。ほかに、平田薫、河西志帆、竹本仰、すずき穂波、藤田敦子、増田暁子などに注目。ほかにも誌面に書けなかったが多士多彩。
※「海原賞」これまでの受賞者
【第1回】(2019年)
小西瞬夏/水野真由美/室田洋子
【第2回】(2020年)
日高玲
【第3回】(2021年)
鳥山由貴子
【第4回】(2022年)
川田由美子
【第5回】(2023年)
中内亮玄
【第6回】(2024年)
望月士郎/横地かをる