『海原』No.76(2026/3/1発行)誌面より
第4回鈴木六林男賞受賞作品
狐花火 三好つや子
種袋生の死の音ごったごた
蛇穴を出てルナールの一行目
血縁がゆらいでおりぬ遠蛙
七月の空青々と無調整
少年兵走る夏野へ星野へと
止まらない船虫トルコ行進曲
逆縁に手向ける狐花火なり
十三の振りあるダンス錦鯉
秋澄んで音の隙間を歩く猫
蜩にふっと金属疲労かな
鉦叩き夜の純度を計りおり
深海魚の眼のうつろ昼の月
真相は外伝にあり猫じゃらし
背泳ぎのもがきを抱え柿熟す
木の鳥と木の実の鳥の禅問答
古傷のような鍵穴冬に入る
返り花居るはずのない母の町
傍聴に紛れていたる雪女
なんとなく臨死気分よ日向ぼこ
地に眠る蛇と交信象の足

