果無山脈 大西健司

『海原』No.26(2021/3/1発行)誌面より

◆自由作品20句

果無山脈 大西健司

忍手の男無患子こぼれおり
果無や絵馬堂にがまずみの赤
熊野晩秋心許なき竹の杖
杯に甘露の水や那智は秋
茶屋跡の石蕗果無山が見ゆ
毀誉褒貶雲取越の緋連雀
雲取越や傀儡師霧の道辿る
木沓鳴る道や芳し煙茸
縋る杖なく箸折峠すがれ虫
それぞれの秋湯の峰に滾る水
果無の郷や目箒匂いけり
こともなき十一月や杖磨く
毒消しを探す果無山は秋
無限宇宙はてなし坂の木守柿
とがの木や中辺路に兄探しおり
大斎原野﨑憲子の真言や
溲瓶忍ばせ大先生は冬熊野
有精卵翳す近露冬はじめ
狐火や古道はずれの厩跡
讃岐の人狐火の杜目指しけり

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