北溟子に捧ぐ 田中信克/第7回海原金子兜太賞受賞第一作〔3回連作・その2〕

『海原』No.76(2026/3/1発行)誌面より

第7回海原金子兜太賞受賞第一作〔3回連作・その2〕

北溟子に捧ぐ 田中信克

北辺の秋桜薄き陽の香り
移送幾日黎明分かぬ貨車の内
雪が近づく「もうすぐハバロフスクだよ」
密告と監禁遠い海の音
書いては消す母語許されぬ北の土に
シベリアという空蒼く鳥帰る
戦犯リンチ千人針の紅い絲
鴨緑江アムール晩夏波は無盡に無差別に
俘虜の絶命整理番号四十五
遺書記憶せり一字一句を舞鶴まで

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