2025年7月は9/20(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:50年後、俳句を取り巻く状況はどうなっていると思いますか?
結果はこちら
句会報:2025年9月「海原オンライン句会」
【高点句】(5点以上)
ゴキブリを花子と呼ぶ店大繁盛 野口思づゑ
並びたる靴のかかとにある秋思 矢野二十四
母もいたその母もこの踊りの輪 花舎薫
向日葵や隊列組んで影がゆく 樽谷宗寛
ひめむかしよもぎすぱすぱ歩いてきた 平田薫
錨星なぞる子のゆび指揮者めく あかり
虫の音の金属音が夜を砥ぐ あかり
推敲はらせん階段秋深む 石川まゆみ
蓮根を薄く切る軽く返事する 桂凜火
明け方の歩道橋にてコーヒーを 佐藤ふみ
ひと言にひと言あとは虫の闇 原洋一
貫けば嘘も真実曼珠沙華 原洋一
古酒は罪新酒は罰の味がする 姫
おさえてるわたしから逃げたい夏帽子 平田薫
【参加者各一句】(高点句以外)
生きているつもりを生きてあきのくさ 男波弘志
知らんぷりで通すしかない冷奴 黒済泰子
新涼や歳時記めくる指の腹 満葉
八月やおのがじし見るおのが臍 石鎚優
抱きしめていいかと問へば地獄花 木村寛伸
手術中自販機うらで虫の声 胡桃
新しき女王蜂と巣を離れ 小松敦
若冲の描く病葉命満つ 塩野正春
調律のかなわぬピアノ秋の虹 田中信克
戦後じゃなく戦前かも敗戦日 坂内まんさく
もろもろの根を引きずりて晩夏光 有馬育代
尾根道を這いのぼり来る夏の雲 川嶋安起夫
気を入れぬほどの力や薬掘る 坂川花蓮
ムックリがムンチロ(粟)撫でて青天へ 田中怜子
見をさめと決めて生国鰯雲 長谷歌子
手押しポンプ記憶の欠片が二つ三つ 石橋いろり
夕の風やさしい言葉ふっと出る 井上勉
フランス語の予習すませる案山子かな 大渕久幸
「三日月」の渾名の亡夫や空にをり 小田嶋美和子
鞦韆で夏空切り裂く都会の子 樹下修司
見得を切る伯父貴三人村芝居 源汰
おほかみの瞳孔開くしらべかな 小西瞬夏
黒鍵の「レ」の音鳴らず秋の水 さかいまゆみ
夜学帰りの乙女の眩し中央線 野口佐稔
原爆忌鳥は飛ぶもの歌うもの 野村正孝
耳慣れぬタミル語あふる一夜酒 門司侑里
◇
今月は38名うち初参加1名。最高点は7点「ゴキブリを」、元気で楽しい店。たぶん店主の人柄が素敵。ゴキブリ嫌いにはウケなかった。「花子」はゴキブリの隠語か。同「並びたる」、着眼点がいい。学校や法事等で複数の靴が並ぶ景を想像した人多数。「秋思」があるのは自分の靴だけか、どの靴にもあるのか、鑑賞が割れた。読者それぞれの「かかと」と「秋思」を創り出す句。6点「母もいた」、類想感あるも「この踊りの輪」がいい。今「この」現在から時を巡って家族を回想する「輪」でもある。同「向日葵や」、「隊列」は「向日葵」の比喩と解釈した人もいれば、園児の散歩、戦争の兵隊、映画「ひまわり」(ウクライナ)等々読者によって様々。「影」にネガティブな状況をイメージした人が多かった。同「ひめむかし」、「すぱすぱ」がいい。地味だけど潔い生き様。一方、境涯感などを読むのではなく、草叢を屈託なく歩いてきた、ただそれだけの景と見た方が面白いとの意見もあり。以下5点句「錨星」、子への愛情を鮮明に映像化。みんな子供に弱いなあ、との声も。「虫の音の」、「砥ぐ」がいい、砥ぎ終わると朝。金属音に実感あり。「虫の夜ふと金属音が喉を刺す 兜太」と比べて採った人も。「推敲は」、ぐるぐると上ったり下ったり、納得感あり。「蓮根を」、「薄く切る」時の集中を邪魔するなという主婦の声が多かった。「明け方の」、素朴な日常実感を素朴に表現。「ひと言に」、阿吽の呼吸、ピリピリした空気、二人の関係性を読者各様に想像。「貫けば」、やや教訓めいた上五中七を「曼殊沙華」で形象化し納得感を得た。「古酒は罪」、洒落た言い訳をしながらも飲む酒好きに共感。「おさえてる」、葛藤があるようだ。きっと「わたし」が「夏帽子」。
今月の「金子兜太・語録」は「【三】率直に〈生活実感〉を、【四】実感と言葉」(『金子兜太の俳句入門』角川ソフィア文庫2012年より抜粋)「海原」ホームページの「海原テラス」コーナーをご覧ください。(記:「海原」小松敦)