2025年7月は7/19(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:暑い季節だから食べたいもの、飲みたいもの、読みたいもの、見たいもの、行きたい所、やりたい事や欲しい物、等々作句のヒントに教えてください。いくつでも。
結果はこちら
句会報:2025年7月「海原オンライン句会」
【高点句】(5点以上)
かき氷言えぬことから溶けてゆく 木村寛伸
履歴書を書くならば雨山椒魚 男波弘志
部屋干しがzoomにうつる梅雨じめり 夏谷胡桃
毛虫這う世界の果てを折り返し 野村正孝
お下がりの浴衣短し杏飴 満葉
失敗はくりかへします的真夏 石川まゆみ
栗の花老いてひとりで眠る家 夏谷胡桃
曖昧でいるやさしさや豆ごはん 美緒
【参加者各一句】(高点句以外)
その話脇へ置きましょソーダ水 有馬育代
因果とう口中にある枇杷の種 榎本祐子
捌かれるもののまなこや流れ星 桂凜火
こちら向く鬼百合の数墓の数 小西瞬夏
まだ父で夫で男で青芒 原洋一
じぶんというちいさい荷もつ青揚羽 平田薫
果てるとき星を見ている黄金虫 矢野二十四
臍二つ向ひ合ひたる花火かな 石鎚優
宵涼し角の灯りの青果店 花舎薫
扇風機へ果てず「あああああああああ」 ながたに歌子
数独のするする解けて冷やそうめん 姫
老境を問はれ果つるや鬼やんま 樹下修司
銀漢の果て寝返りを打つ畳 小松敦
群衆は風の落葉についてゆく 三枝みずほ
ITの超難問や海原句の翻訳 塩野正春
昼寝覚めほろりと記憶失くす夢 田中信克
月光を遮るものなきガザの果て 野口佐稔
白南風やキッチン鋏研ぐ仕度 野口思づゑ
ポポモポモ経年劣化桃太郎 井上べん
コンコース果ては真夏の西病棟 大文字良
出目金とランチュウと吾安穏と 小田嶋美和子
ひまわりや相合傘の背ナに龍 源汰
氷菓食む目の前に縄文遺跡 さかいまゆみ
夏椿年を取らない死者の声 菅原春み
デイゴ咲く島に一基の信号機 樽谷宗寛
動物は俺と雷神50階 坂内まんさく
暗黒の空の果てなる旱星 坂川花蓮
◇
今月の参加者は34名うち初参加1名。最高点は11点「かき氷」、言いにくいのか、なかなか切り出せない、「言えぬことから」がうまい。どんな状況なのだろう、言えずに溶けつつあるものは何なのか、読者それぞれが想像して楽しめた。既視感がある、分かりすぎる、との声もあった。6点「履歴書を」、「山椒魚」の世界。清流に生きてきたこれまでの履歴を振り返るとそれは綺麗な雨のようであった。「山椒魚」に同化して感じるものがあった人は採った。理不尽や自虐などを感じて採った人もいた。同「部屋干しが」、それほどドラマティックではない現代の淡々とした生活が見える。そして少しの可笑しみ。もっと感慨(例えば哀感)が欲しい人は採らなかった。同「毛虫這う」、「毛虫」の世界を思う。もしも金魚なら水槽が世界全部か。人間の世界もスケールが違うだけで毛虫と同じじゃないか。一方で、具体性があるようでない、との意見も。同「お下がりの」、上五中七だけならよくある光景だろうが、「杏飴」が新鮮。甘酸っぱくて可愛い、嫌味が無い。昭和ノスタルジーとの声もあったが令和の話、母から子への「お下がり」だった。5点「失敗は」、「あやまちはくりかへします秋の暮 三橋敏雄」や原爆慰霊碑を思わせておきながら、「的」がユーモラスに軽妙に、どうしても失敗してしまう人間の滑稽さを明るく熱く肯定している。肯定した後にそこはかとなく悲哀を感じる。同「栗の花」、老境の達観にしては「栗の花」が生々しい。若かったはずの今の自分を客観視している。同「曖昧で」、 上五中七は教訓めいているなと思いつつも「豆ごはん」に心を掴まれた人多数。「豆ごはん」の威力。
「毛虫」になったり「山椒魚」になったり、「捌かれるもののまなこや流れ星」、「果てるとき星を見ている黄金虫」など、「生きもの」と「人間」との間を行き来するような「生きもの感覚(金子兜太)」な句が面白かった。
今月の「金子兜太・語録」は「【八二】〈自然〉」(『金子兜太の俳句入門』角川ソフィア文庫2012年 より抜粋)「海原」ホームページの「海原テラス」コーナーに転載しているのでご覧ください。(記:「海原」小松敦)