2025年6月は6/21(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:最近の、小さな驚き、小さな感動 、どんなモノやコトに気持ちが動きましたか(大きくてもいいです) 。よろしければ教えてください。何個でも。
結果はこちら
句会報:2025年6月「海原オンライン句会」
【高点句】(5点以上)
片方は聞き流す耳古団扇 原洋一
水中花きみの不在を肯定す 木村寛伸
密売の如く手渡すさくらんぼ 源汰
業平忌けふはアップルパイ日和 矢野二十四
八月十五日水に手を置く 男波弘志
母の忌や合わせ鏡の中に黴 さかいまゆみ
パレスチナの石鹸を買う夏至祭 夏谷胡桃
葉桜やネクタイばかり残りをり 矢野二十四
【参加者各一句】(高点句以外)
狙撃手の効き目夏野を切り刻む 大文字良
からだより手足伸びゆく夏の夜 小西瞬夏
竹落ち葉肩に優しき京の径 塩野正春
まみむ「め」だけいきもののけはいがする 喃多哩唖里玖
本売りてある夜家中麦の秋 井上べん
刳舟に鳥の文様五月逝く 榎本祐子
二両目は階段の前青嵐 小松敦
万緑や西郷像に鳩の糞 坂川花蓮
中落ちよ肝よ血合よ初鰹 ながたに歌子
遠足の前後真ん中目が光る 野口佐稔
校門をくぐれぬ理由いととんぼ 看做しみず
お日様と同じにおひか天花粉 門司侑里
コココマイ古古米こまい田植どき 石川まゆみ
正しさは一つではない浮いてこい 大渕久幸
青梅雨や耳目凝らして試運転 小田嶋美和子
水晶に鯉のぼりが写り込む 葛城広光
梅雨晴れ間古古古古米の香の佳しと 杉谷香奈子
畳の目数えこの世の油照 田中信克
大夏野風神と舞ふ旅役者 樽谷宗寛
蚊帳の中押し寄せる蚊の大軍ガザ 野口思づゑ
入梅の日梅雨入り告げるラジオかな 坂内まんさく
賽の目を独り転がす青簾 満葉
蛇わらふ顎外れちまつたまま 有馬育代
あぢさゐのはだかを雨がつよくうつ 石鎚優
滅びの法則ただ只浮遊し梅雨に入る 石橋いろり
空爆は弱者へモノクロームの夏よ 大西健司
マリーゴールド赤子を産みし便りくる 桂凜火
機嫌よく人格者往く夏の空 樹下修司
風薫る中吊りぱたとぱたぱたと 野村正孝
嫁入り舟に異人のめをと風薫る 姫
黒揚羽パンでもクッキーでもないスコーン 平田薫
◇
今回は初参加2名を含む38名。いつも通り3句出し(内一句はテーマ詠)5句互選。テーマ詠お題は「目」。最高点は14点「片方は」、諧謔味のある句。それなりに人生経験を積み重ねてきた練達の御方なのだろう。「古団扇」からもそのことがうかがえる。聞き流されている人の方も見えてくる。よくある話と思った人は採らなかった。耳が遠いだけでは?(笑)との解釈も。7点「水中花」、抽象的な「事」俳句のようでもあるが、「水中花」が良かった。そこにいるけど生きてはいない「水中花」。「水中花」の存在感が中七下五を具現化している。死別、失恋等、解釈は様々。同「業平忌」、恋多き美男子、平安のアイドルに注がれる少女(?)の視線と熱々のアップルパイを歴史的仮名使いで。フレッシュな面白味を感じた人が採った。同「密売の」、今年も不作という「さくらんぼ」。だからといって「密売の如く手渡す」ことなどないだろうが、面白がっている。わざとらしいと思う人は採らなかった。5点「八月十五日」、気持ちを鎮めているのだろう。静かに平和を祈っている。一方、この所作の解釈が難しいとの声も。同「葉桜や」、気持ちの整理がついて、身辺整理あるいは遺品整理に着手した。捨てるに捨てられないのだ。一方で、さっさと捨ててしまえと断捨離上手の声もあった。同「パレスチナの」、パレスチナ支援の気持ち。「夏至祭」がいい。遍く降り注ぐ太陽の恵みがある一方で、不条理に進められる入植やジェノサイドの悲惨を憂う。同「母の忌や」、形見の「合わせ鏡」だろう。「黴」に母との関係が生々しく思い起こされる。ほか、「からだより手足伸びゆく夏の夜」、「入梅の日梅雨入り告げるラジオかな」など思わず通り過ぎてから振り返るようなおだやかな日常詠が多かった。
今月の「金子兜太・語録」は「具体性の強さ」(金子兜太『熊猫荘俳話』飯塚書店1987年より抜粋)。「海原」ホームページの「海原テラス」コーナーに転載しているのでご覧ください。(記:「海原」小松敦)