句会報:2025年5月「海原オンライン句会」

2025年5月は5/17(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:好きな食べ物や飲み物を具体的に教えてください(俳句にならなそうでなるかもしれない)。いくつでも。
結果はこちら


句会報:2025年5月「海原オンライン句会」

【高点句】(5点以上)

同意書へ三たび名を書き五月闇 木村寛伸

正論をありがとうシャツ裏のまま 三枝みずほ

薫風を抱けよ荷物は俺が負ふ 原洋一

蝶の死をめくれば鉄の匂いする 榎本祐子

階段裏のマネキン全裸四月果つ 大西健司

網棚へ君をうっかり目借り時 有馬育代

静けさは五月の朝の運ぶ音 川嶋安起夫

脳裏の君よ夕立が終わらない 三枝みずほ

風死すや人の行きかふ舞台裏 坂川花蓮

【参加者各一句】(高点句以外)

偶に逢うカントと名乗る庭の蟇 石橋いろり

風船をみんな見上げて軽くなる 小松敦

加齢との診断三度目亀が鳴く 野口思づゑ

春には種買う秋には本を買うように 坂内まんさく

ときどきは道に迷うて昭和の日 矢野二十四

鏡の裏二度見子猫の初体験 石川まゆみ

花冷やホットケーキの裏表 大渕久幸

あとがきに全く碧い蛇がいる 男波弘志

やわらかな針金伸びる昭和の日 桂凜火

春雷や八回裏の我が人生 樹下修司

母の日や手持ち無沙汰の四畳半 源汰

星蝕やひかがみしづかなる五月 小西瞬夏

万愚節裏切り者が主人公 杉谷香奈子

葉桜や風の吹く方吹かぬ方 野村正孝

補聴器を飾りとなして花疲れ 治子

歩くときΩのかたち青虫よ 平田薫

極彩の夜見世の裏の小暗がり 花舎薫

登山茶屋追いついてくる夏帽子 さかいまゆみ

柿若葉もう待つことも泣くことも 田中信克

「裏窓」のグレース・ケリー花水木 田中怜子

喧嘩して短き黙や椿餅 樽谷宗寛

万緑やフィッシュ&チップスorワニバーガー 満葉

馴染みだの裏メニューだのパセリパセリ 看做しみず

身の内に裏庭のあり青嵐 石鎚優

この中に裏切る者も聖五月 一兎

皆往きて帰り来ること花筏 井上べん

青き踏む吾がアバターに拍手 塩野正春

オリーブの葉裏に卵南風 菅原春み

上げ裏がけふの塒か初燕 ながたに歌子

裏高尾汗して森に山岳会 野口佐稔

裏金衝く教授のバンダナ夏来たる 姫

得意げな顔して頼む裏メニュー 二月結卯

   ◇

 今月は初参加1名を含む40名。いつも通り3句出し5句選。テーマ詠お題は「裏」。最高点は8点「同意書へ」、「三たび」がリアル。医療行為への同意や連帯保証等の契約をイメージ、いずれも「五月闇」の気分で。「き」の理屈っぽさを嫌う声もあった。7点「正論を」、「正論」を振りかざす人を前にした余裕。間抜けなおかしみに共感。ちょっと出来すぎという声も。同「薫風を」、キザだけど嬉しい、子の将来への期待と親としての責務、命令口調がイヤ、コメディでしょ等。6点「蝶の死を」、廃れた工場街や産炭地をイメージした人複数。「荒地」派の既視感があるものの歴史の中の生き様を印象的に暗喩している、「てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った 安西冬衛」を想起する等、読者の生きてきた土地や時代背景・社会情勢がそれぞれのポエジーを立ち上げた。同「階段裏の」、鮮明な描写が物語る。無機質な生死、人間中心社会の生生しさ、店舗の衣替の裏側、等々。5点「網棚へ」、「君」の暗喩。読者それぞれにイメージできた。同「静けさは」、素直に初夏の穏やかさを体感。「朝を」だったら採ったという人も。同「脳裏の君よ」、「終わらない」がいい。生ぬるい土砂降りの思い。同「風死すや」、息も詰まる舞台裏の臨場感、暗喩としての「舞台裏」を様々にイメージ。
 句会終了後の雑談会「アフタートーク」では「地元の味」で賑わった。また、金子兜太の本についても話題になった。古い著作は古本屋で調達するか、限られた図書館でしか読めず、句集や評論などの復刊を期待する声があがった。
 今月の「金子兜太・語録」は「成熟ということ――思想の肉体化」(金子兜太『熊猫荘俳話』飯塚書店1987年より抜粋)。「海原」ホームページの「海原テラス」コーナーに転載しているのでご覧ください。(記:「海原」小松敦)

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