句会報:2025年4月「海原オンライン句会」

2025年4月は4/19(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:俳句でしかお目にかからない季語や印象的な言葉を教えてください
結果はこちら


句会報:2025年4月「海原オンライン句会」

【高点句】(5点以上)

蝶の昼ちいさな遮断機がおりる 平田薫

春驟雨他人ばかりの交差点 原洋一

春愁やモデルハウスの白き壁 満葉

霾るや大陸よりの匙かげん 有馬育代

ぺんぺん草冒頭シーンはやりなおし 桂凜火

返すべき鍵もう一つ遠雪崩 小松敦

ボンゴレにかぬ貝あり万愚節 さかいまゆみ

尾頭をふっくら焼いて涅槃西風 田中信克

春風を誘い弥勒のくすり指 山下一夫

【参加者各一句】(高点句以外)

花守となりながら櫂となりながら 男波弘志

花ぼんぼり棒切れほどの母の腕 花舎薫

多様性などと名を変え花の冷え 木村寛伸

朧夜に缶・びん・ペット捨てに出る 榎本祐子

青虫を咥えて鵯の真顔かな 奥山和子

ガザの子が駆け出して行く花堤 樹下修司

びつしりの葉書の文字や春の昼 源汰

シャドーボクシング拳より蝶逃げ 小西瞬夏

先頭は自由の女神もんしろてふ 坂川花蓮

花の闇歯並び悪い深海魚 塩野正春

いつの日か地球は更地霾ぐもり 菅原春み

蛇穴を出れば頭上に防犯カメラ 野口佐稔

お揃いの春色ベレー老二人 姫

タオル地の手触り鷹鳩と化して 向井麻代

花屑や一人親方残業す 門司侑里

ジューススタンド夏帽の列に着く 和緒玲子

くちべにのやうにほほえむ山桜 石川まゆみ

号泣のいがぐり頭山桜 石鎚優

飛竜頭へ箸先で取る木の芽味噌 ながたに歌子

葉桜や時に釣り合う頭と心 野口思づゑ

春塵を2t二台の大道具 看做しみず

禿頭の好きな四月のマドレーヌ 矢野二十四

二人来て去ってやっぱり目借りどき 井上べん

人日や頭の中を赤い虫 大渕久幸

春の夕相撲観戦義母若し 小田嶋美和子

北窓あける畑談議がそこここに 夏谷胡桃

うりうりとインコの頭撫でる夜 ふみ

木星に記憶物質散乱す 葛城広光

ブラウスの真白きリボン新社員 杉谷香奈子

転害門夫と立ち見ぬ春の虹 樽谷宗寛

雪溶けて地蔵の頭まづは出づ 坂内まんさく

   ◇

 今月は初参加2名を含む40名。いつも通り三句出し五句互選。テーマ詠お題は「頭」。最高点は8点「蝶の昼」、実景の奥に物語を秘めている。「蝶」が主人公。長閑な「昼」に、田舎の単線、めったにおりない遮断機がおりる。行く手を遮断され、何かがやってくる。現代社会の恐るべき暗喩なのではないかと深読みする人も。長閑さと同時に不穏さを感じる人が多かった。童話的世界の主体が「蝶」では、胡蝶の夢のようで予定調和じゃないかとの意見も。7点「春驟雨」、突然の雨だからこそ「他人ばかり」と猶更感じる。「春驟雨」を十分に感じとること。境涯感すら滲むとの声も。当たり前と思った人は採らなかった。6点「春愁や」、本来は、新居を求める喜びの空間なのに「春愁」であるところが眼目。「白き壁」に生活感の無い白々しさや不安を感じる。同「霾るや」、迷惑な黄砂だがどうにもならない、無力感と諦念に共感。「大陸」に現代中国の政治動向を読んでしまうと採れない。同「ぺんぺん草」、深刻になっては面白くない。むしろこのこだわりの滑稽さを面白がる。同「返すべき」、読者それぞれに物語を読み込んでいたが、「遠雪崩」がメロドラマにしているとの声も。同「ボンゴレに」、「万愚節」の取り合わせが絶妙。嘘も災いも開いた貝ならぬ口から出てくるものだ。同「尾頭を」、春彼岸の候、故人をご馳走で迎える心持ち。「ふっくら」が優しい。5点「春風を」、風をすら惹き付ける薬指の誘惑。いわんや人間をや。弥勒像を是非見たい。
 ところで3月から句会終了後の雑談会「アフタートーク」をやっている。近況や関心事、句会で触れなかった句について話すなど賑やかで楽しい。
 また、これも参加者からのリクエストに応えて「金子兜太・語録」のコーナーを設けた。句会資料に、金子兜太の著作などから兜太の言葉を抜粋掲載して紹介するというもの。同じ内容は「海原」ホームページの「海原テラス」コーナーに転載しているのでご覧ください。
(記:「海原」小松敦)

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