2025年2月は2/15(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:2月20日は金子兜太の忌日です・兜太と聞いて思うこと 、何でも自由にコメントください
結果はこちら
句会報:2025年2月「海原オンライン句会」
【高点句】(5点以上)
病むことも日脚が伸びてゆくことも 田中信克
うすらひの上手な嘘に空の青 矢野二十四
兎抱く愛の形に背を丸め 一兎
ため口を敬語変換して余寒 木村寛伸
寒い日は変哲の句に温まる 野口佐稔
【参加者各一句】(高点句以外)
もう影の濃く曳かれあり蝶の道 和緒玲子
行間はただ風花の匂いかな 榎本祐子
変態は褒め言葉なり梅の花 向井麻代
こころってここにあるよと幼な子の春 井上べん
筆に墨たっぷりと春の山暮れて 桂凜火
建売りにそれぞれの夜話雪しんしん 花舎薫
握手して周防に帰る猿回し 樽谷宗寛
榠樝酒や仮病はいつも晴れ晴れと 夏谷胡桃
さえずりのずっと遠くに都市の音 野口思づゑ
先見えぬ廊下の奥の余寒かな 原洋一
老いひとり仰ぐも良しと寒の月 治子
天照はジェンダーフリー春の虹 姫
白つばきお地蔵さまは耳が大きい 平田薫
ひさびさに会う君初めてみるセーター ふみ
三秒後戦跡となる春景色 看做しみず
見開きて坐る人形春の闇 石川まゆみ
人新世むづる子背をひて田植人 樹下修司
春寒し口に含みて水動く 小西瞬夏
目印のピンクのリボン冬木の芽 小松敦
雪止んで街はパントマイムのワンカット 塩野正春
寒明やサ行変格復習ひ終へ ながたに歌子
粟善哉隣の客は愚痴三昧 満葉
山脈てふ変はらざるもの一月尽 石鎚優
畔ひかる踊子草のお目覚めだ 小田嶋美和子
挿絵には無名の林春隣り 男波弘志
この列にガンジー何人紛れてる 葛城広光
カラフルなサクマドロップが好き百千鳥 さかいまゆみ
黒髪のうなじに溶くるぼたん雪 蒼汰
くわずいもの葉に花落つ城かな 坂内まんさく
初伊勢の母からline変事あり 門司侑里
◇
二月は初参加2名を含む35名。最高点は7点「病むことも」、どちらも自分ではどうにもならない「自然」、生きるしかない。一方、その通り、曖昧、読者に任せすぎ、等の意見も。同「うすらひの」、すぐに溶けて消えてしまう「うすらい」。「うすらい」のように「上手な嘘」、「上手な嘘」のような「うすらい」、と解釈が分かれた。「うすらい」には嘘じゃない「空の青」が映っている。平仮名表記が頼りない嘘、イノセントな嘘、など嘘を特徴づけている。句全体を暗喩と捉えた深読みもあり、議論百出。6点「兎抱く」、兎の丸いフォルムと柔らかな抱き心地をイメージ。「愛の形」は言い過ぎ、既視感ありとの声も。5点「ため口を」、「敬語」に「変換して」いるのは誰?との議論あり。「ため口を」聞いている方が敬語で返答しているのか、ため口を躊躇って敬語で話をしているのか。やや複雑。いずれにせよ二人の関係は「余寒」の寒さあり。同「寒い日は」、ユニークな句にホッとする、だけじゃなくて「変哲」は「小沢昭一」の俳号として採った人もあり。作者曰く小沢昭一著『変哲半生記』がお薦めとのこと。4点「もう影の」、何世代も同じルートを旅するという蝶の生態を美しく映像化、「もう」は「まさに、いまや」の解釈。同「行間は」、言葉にならない行間の思いに「風花の匂い」を感じとる感性。二人の会話の行間をイメージした人も。同「変態は」、個性的でユニーク。断定がいい。寒さに咲く「梅の花」にも個性を見た。ほか、3点句「ひさびさに」の句はちょっと甘いものの、一句から様々なシチュエーションを想像して語る読者それぞれの「物語」が面白く盛り上がった。中上健次氏が「俳句ってすごいな、一句から百枚でも三百枚でも書ける」と言っていたという宇多喜代子氏のエピソードを思い起こした(※)。句会の新たな形式として、選句・選評ではなく、一句からストーリーを想像して語り合う「物語句会」も面白いかも。(小松敦記)
※参考サイト「第86回海程秩父俳句道場 宇多さんの健次の話」https://bit.ly/43bVOEN