句会報:2024年12月「海原オンライン句会」

2024年12月は12/21(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:あなたの「俳句スイッチ」を入れてくれる (俳句を作る元気をくれる)モノやコトは何ですか? 映画・人物・本・音楽・散歩・睡眠などなど何でも何個でも。
結果はこちら


句会報:2024年12月「海原オンライン句会」

【高点句】(5点以上)

朝の日や冬蜂に影丸く生まれ 小西瞬夏

丸まってしばらく猫でいて冬日 三枝みずほ

詩は万物の囀りですか谷川さん 三枝みずほ

片時雨小さき寺に力士来る 樽谷宗寛

【参加者各一句】(高点句以外)

手袋欲し指に指輪の跡あれば 和緒玲子

極月や生きてるだけで丸儲け 木村寛伸

裸木になるまで空を見たりけり 小松敦

米を研ぐ指をすり抜け十二月 原洋一

白杖の響くホームや息白し 満葉

角丸き消しゴム持て余す寒夜 向井麻代

殊更に馬鹿を演じる鮟鱇鍋 大渕久幸

春の暮ほどの厚焼き卵かな 男波弘志

電停の孤島に君を待つ聖夜 花舎薫

ためいきと愚図が寄り添う冬日向 田中信克

鹿の声深い井戸をのぞく気持ち 夏谷胡桃

被爆者代表女性がいれば二重丸 野口佐稔

きょうは冬のまるい月ひとつだけ 平田薫

聖夜東京いばらのようにイルミネーション 宮下由美

冬の雨白地ばかりの手帖かな 矢野二十四

本丸はあの寒昴あるあたり 石川まゆみ

俳句てふ弾丸ありし枯野かな 石鎚優

落葉奔る風強き日の耳冴えて 榎本祐子

冬ざれのフェリー丸薬転がりぬ 大西健司

マンホールピザを丸く据えてるよ 葛城広光

強情な犬絨毯に丸く寝る 桂凜火

人類に丸テーブルをレノンの忌 樹下修司

狐火やデジタル難民の頭上ふわふわ 塩野正春

丸文字の便り片手に日向ぼこ 治子

霜柱ヒトで暖とるゾンビの手 坂内まんさく

大くさめ噂の種を蒔きました 姫

丸卓や言葉少なに冬座敷 門司侑里

白息を拭けど鏡の知らぬ吾 伊東リハじ

過ちは繰り返しませぬ丸い空 井上べん

「和」を願ひ「金」と筆執る冬紅葉 小田嶋美和子

母さんのおでん花丸まるくなる 川崎千鶴子

冬旱首都に乱あり戒厳令 さかいまゆみ

くてんつけて敬遠されてのつぺ汁 ながたに歌子

   ◇

 十二月は36名、初参加2名。試みに兼題(「丸」)を設けたところ、発想が人それぞれで面白かったので、次回も兼題かテーマを設けようと思う。
 今回の5点以上は6点4句のみ。6点「朝の日や」、低く淡く差す冬陽と冬蜂との柔らかな陰影。下五に「れ」を提案する声もあったが、「生まれ」の韻律に丸みを帯びた生命感が宿るとも思う。同「丸まって」、「しばらく」が良い。多忙な日常に束の間「猫」になるかわいさ、やさしさ。採らなかった人からは類想感ありとも。同「詩は万物の」、十一月に他界した谷川俊太郎への哀悼。「万物の囀り」が巧み。「ですか」のニュアンスを楽しむ。「です」と言い切るのでもなく「ですね」と同意を求めるのでもない。同「片時雨」、小さな寺の静、大きな力士の動、その存在のコントラスト。「片時雨」に悲喜こもごもな日常あり。実に平和な風景、とのコメントに共感。以下4点6句も紹介する。4点「手袋欲し」、揺れる心境、「指輪の跡」に物語がある。分かり過ぎ、との声も。同「極月や」、兼題「丸」からの発想で「生きてるだけで丸儲け」の句が二つ出たが、「極月や」だからこそ「丸儲け」感が際立つ。もう一方は「秋刀魚焼く」で零点だった。同「裸木に」、シンプルだが大きな世界。冬の生きものの空。時の流れを感じる。「たりけり」は鯱張りすぎとも。同「米を研ぐ」、十二月の疾走感あり。「指をすり抜け」ていくものは何か?それは時間、この一年間、とのコメントに納得。同「白杖の」、閑散としたホームが良く見える、奥行きのある描写。「息白し」で景に血が通う。同「角丸き」、「角丸き消しゴム」にはモノ以上の親しみを感じる。何を持て余す?自分を持て余す、との解釈に共感。ところで「生きてるだけで丸儲け」は明石家さんま座右の銘と聞くが、「ことしから丸儲ぞよ娑婆遊び 一茶」も素敵。(記:「海原」小松敦)

“句会報:2024年12月「海原オンライン句会」” への2件の返信

  1. ながたに歌子(うたこを 歌子にしたいのですが。よろしく) より:

    兼題に対する皆さんの感性の「ちがい」が予想以上に面白かったです。
    なまじ、季語ではない分 広がりがでたと思いました。

    1. コメントありがとうございます。ながたに歌子さま、承知いたしました。次回もよろしくお願いいたします。

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