2024年10月は10/19(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:歳時記には載ってないけど、載せてもいいんじゃないかという言葉があれば教えて
ください。何個でも。例:ランドセル買う(冬)
結果はこちら
句会報:2024年10月「海原オンライン句会」
【高点句】(5点以上)
書くたびに波打際となるノート 男波弘志
秋雨や父の書斎という遠景 男波弘志
あの笑みへ巻き戻せぬか能登の月 石川まゆみ
秋の日をすこしわたしのために歩く 平田薫
【参加者各一句】(高点句以外)
デジタルを離れて自由涼新た 塩野正春
自販機で買う山の水小鳥来る 菅原春み
一瞬に交わす耳打ち小鳥来る 藤田敦子
名月や今も昔も大凡人 矢野二十四
パン種は膨らみすぎて神の留守 和緒玲子
思春期のごとき秋刀魚を焼かんとす 石鎚優
言葉尻跳ねてる風の吾亦紅 榎本祐子
灯火親しむ誰も、僕を、知らない 大渕久幸
形あるものを拐いて秋出水 木村寛伸
月光に躓いてゐる調律師 小西瞬夏
窓全部開ける青年鵙日和 小松敦
公約はおやくそくでなくおとりかご さかいまゆみ
オリーブの実憎しみやがて銃を持つ 夏谷胡桃
天災に人災神はいつも留守 野口思づゑ
メイヨウと行商笑ひ柳散る 門司侑里
まだ翔べない私と秋のふらここと 安部拓朗
蟷螂がニッポンのオヤジの貌をする 小田嶋美和子
白粉花ずうっと笑顔じゃいられない 桂凜火
遠吠えの澄みて晴夜の新酒かな 花舎薫
芋煮会見知らぬ人の手がのびる 坂川花蓮
花野むらさき私ゆびさきから暮れる 田中信克
新調のトースターは黄小鳥来る ながたにうたこ
新しい舗装の匂い秋茜 満葉
秋も時雨生き抜けよ能登の輩(ともがら) 井上べん
波来たるZ世代や初嵐 樹下修司
琴の爪はたちの妣を月に答ふ 樽谷宗寛
秋霖や本音に触れぬ置手紙 原洋一
桃をむくナイフの刃先やや鈍し 治子
昼過ぎに仕舞ふ草市昼呑みす 姫
◇
今回は32名、うち初参加1名。秋の行事が重なり欠席投句の方もちらほら。今回はいつもより選がばらけて5点以上の高点句が少なかった。最高点7点「書くたびに」、「波打際」に筆跡を見たり、寄せては返す心象風景と重ねたり、それ以上先に進めない水際を感じたりと様々。一方で「波打際」に実感が湧かず「美しすぎる」という声も多数。6点句「秋雨や」、「父の書斎」の立ち入り難さに共感多し。父との距離感を「遠景」と喩えることに是非あり、既視感を覚えた人も。少しかっこよすぎとも。5点句「あの笑みへ」、未だ復興の道のりの遠い能登へ思いを馳せた句。能登で苦しむ人に寄り添う言葉になっているかと問いかける声もあれば、目の前の社会事象を詠むこと(所謂狭義の「社会性俳句」)を厭わない姿勢に共感したとの声もあり。同じく5点句「秋の日を」、誰かのための時間が多いのだろう、「わたしのため」の時間のかけがえのなさを感じる。「秋の日」がちょうどよい。観念を詠むのは難しいが「秋の日」や「すこし」がリアリティを醸している。一方で、分かり過ぎると言う人も。4点句「デジタルを」、「デジタル」が苦手なアナログ派の選を得ていたが、この句は、所謂ネットやスマホから自由になること、デジタル社会の檻や足枷から束の間解放される自由を詠んでいるのだった。同4点「自販機で」、生活の中のインスタントな自然、そこにも小鳥は来る。または、山の水を山で飲めない貧しさ。いずれも現代的な現実感。文明と自然の対比だ!と熱く語る人に対しては、夏草に汽罐車の車輪來て止る(誓子)が既にあるとの声も。4点「一瞬に」、耳打ちの内容が気になる、スピーディなドラマ展開、「小鳥来る」の場面転換。4点「名月や」、下五の自虐ネタをどう生かすか、上五に賛否あり。やはりここは、みみっちく卑下することなく、「名月や」と大見得を切ってもらってよかった。
毎度ながら句会で他人の選評を伺うと、自分の器の小ささや想像力の浅さ、その時々の感情の凸凹や選の揺らぎを思い知る。それが面白い。
(記:「海原」小松敦)