句会報:2024年9月「海原オンライン句会」

2024年9月は9/21(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:① 俳句がなかなか作れない時(スランプの時)にはどうしますか?
② 俳句初心者の方に一つだけ助言してくださいと言われたらどんなアドバイスをしますか?(初心者の方はどんなアドバイスが欲しいですか?)

結果はこちら


句会報:2024年9月「海原オンライン句会」

【高点句】(5点以上)

跡取りもへつたくれもなし墓洗ふ ながたにうたこ

メロン切る転職サイトあけたまま 安部拓朗

後ろ手に閉める扉にある秋思 原洋一

文庫本ぐらいの人といて九月 男波弘志

壁隔て二人の夜長ひとりひとり 花舎薫

二日目の仔山羊のうぶ毛今朝の秋 菅原春み

かまきりや吐けば弱音になる本音 原洋一

桃熟るるわたくしたちは酸化する 宮下由美

【参加者各一句】(高点句以外)

海を見るただそれだけの秋の宿 石川まゆみ

家族葬そのときしほからとんぼかな 石鎚優

新涼や岩波文庫のパラフィン紙 さかいまゆみ

義手義足いま身にまとう国の旗 田中信克

線引けばその中に降る「黒い雨」 野口佐稔

コスモスやわざと迷子になってみる 坂内まんさく

秋五輪大の字で泣く車椅子 姫

衣被つるんと告白してしまう 桂凜火

秋蝶の翅のよごれを耳打ちす 小西瞬夏

猫パンチよけて鎌あぐいぼむしり 坂川花蓮

菊なます母が忘れたレシピ継ぐ 笹木好里

天国はどんな匂いか雲の峰 佐藤詠子

葛の花どこまで行っても日曜日 平田薫

地下鉄の階段上り秋に入る 伊東リハじ

いちじくの重さ荷崩れのように今日 榎本祐子

とんぼとんぼ愛されること貫いて 大渕久幸

洋皿に寝かされ目剥く新サンマ 塩野正春

待つ便り届かぬままに夏おわる 治子

玄関の下駄をしまひて夏惜しむ 門司侑里

昼の虫シャッター街の露天市 矢野二十四

焦げにけり愛でる主亡きけむりの木 小田嶋美和子

銀漢やサインコサイン弄ぶ 木村寛伸

救急車近所に止まるように月 小松敦

墓参り共にせし人墓の中 紗藍愛

草原を腹で切り裂く赤トンボ 草汰

通いバス今朝咲き乱る特攻花 田中怜子

お揃いのワンピース来て炎暑かな 夏谷胡桃

うつむいて散歩の露人白露かな 野口思づゑ

見上げたら弓張月と避雷針 二月結卯

冷凍庫のペットボトル迷走台風 満葉

蜘蛛の巣や幼子むせぶ息遣ひ 井口蜃

天球は傾いたまま夏じまい 井上べん

秋暑し呪文のような小言かな 樽谷宗寛

   ◇

 今回は40名、うち初参加3名。約半数の19名は「海原」以外からの参加。3句投句、互選5句。
 最高点は11点「跡取りも」、「へったくれ」の語感良し、文句を言いながらも墓を洗う姿が浮かぶ、実感あり、との声多し。採らない人からは「普通(によくある風景と心境)」との声。10点句「メロン切る」、現代の「転職」風景のリアリティに加え「メロン」に作中主体の気分や態度を読者それぞれが思い描いた。実際の転職は「メロン」じゃなかろうとの声もあり。6点句「後ろ手に」、「後ろ手」の魅力に惹かれた人多し。眼目は「扉にある」で、類想句はあるものの、「扉」の物象感(何かと何かを隔てる物)が一句の奥行を生んでいるとの意見あり。「後ろ手」に「秋思」の組合せでは意味深すぎるとの声も。5点句「文庫本」、「文庫本ぐらい」の喩に好ましい人間関係を想うとの選評。「九月」が分かりずらいとの声もあったが、「いて九月」の表現にこれまで共に過ごした時間の経過を読み、「九月」は「切り替わる時期」との解釈もあった。「壁隔て」、上から屋根のない間取りを俯瞰して、読者それぞれに「二人」の関係を思い描いていた。「ひとりひとり」に夜長感あり。夫婦だと断言する人もいて笑い。「二日目の」、真白くてふわふわで柔らかな産毛きらめく、そんな二日目の仔山羊をイメージできた人は採った。「かまきりや」、中七下五はありがちな穿ちのようだが、矜持か強がりか「かまきり」の姿を重ねて共感を得た。「桃熟るる」、「桃」が良いとの声。「桃」は美味しく熟れるが「わたくしたち」の酸化は老化。ユーモラスなペーソス。一方でそりゃそうだ、と言う声も。(記:「海原」小松敦)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です