句会報:2024年7月「海原オンライン句会」

2024年7月は7/20(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:① 俳句上達のコツ(と思っていること)を教えてください。
  ② 選句において、採れない句・採りずらい句とはどんな句ですか?

結果はこちら


句会報:2024年7月「海原オンライン句会」

【高点句】(5点以上)

蛇の衣忘却といふ非常口 原洋一

氷菓食む ところで急用つてなに 和緒玲子

短夜や追伸にさらつと本音 和緒玲子

空蝉や地下街は激しく流る 井上べん

肉体も正気もジュレになる溽暑 花舎薫

老犬の背骨とがりて梅雨明ける さかいまゆみ

あをあをと蚊帳くぐるとき水の音 小西瞬夏

嫉妬して少し多めに水を打つ 矢野二十四

【参加者各一句】(高点句以外)

人間の形したもの蟇 大渕久幸

語り部の語らぬ記憶梅雨の雷 田中信克

立ち泳ぎ未来は希望だったとき 夏谷胡桃

梔子の見知らぬ時間のような昼 平田薫

図書館へ飛ばす自転車夏の月 紗藍愛

目が合へどテレて外せぬサングラス 門司侑里

授精用カップの軽き明易し 安部拓朗

熊ん蜂「浜辺の歌」をうたひをり 石鎚優

忍び込む深夜のプール烏賊になる 伊東リハじ

垂直にわれ撃たれ驟雨の夜 桂凜火

傍らに無精髭いる大花火 佐藤詠子

「ぽんぽん」と「ポンポン」うまい西瓜どっち 坂内まんさく

ビール瓶の結露結婚報告 満葉

今日ですか雨バラバラとビヤガーデン 石川まゆみ

ヤマモモを踏んでしまって感情労働 榎本祐子

水中花襟の如くに汚れおり 男波弘志

愚図り子を鼠花火の刑に処す 木村寛伸

夢二の絵夜毎抜け出すアマリリス 樽谷宗寛

暑き夜のいのちの響き救急車 野口佐稔

いらぬ物どんどん増やし三番草 野口思づゑ

待ちぼうけ流れる滴ソーダ水 二月結卯

着ぐるみの隙間より皆大夕焼 小松敦

ジェットコースター駆け上がる夏の空 坂川花蓮

長生きせな翔平アーチ夏雲に 塩野正春

乗合や故山を桐の花かげを ながたにうたこ

一滴の新茶に和む老いふたり 治子

荒梅雨や記紀より漏れしタケルの子 姫

   ◇

 暑中お見舞い申し上げます。
 今回は34名、うち初参加1名。いつも通り3句投句、互選5句。
 ところでZoom句会の進め方としては、事前に選句までを済ませ、参加者に選句結果一覧を送付。これを見ながらZoomを使って合評を行う。先ず5点以上の高点句から選評、採らない弁も含めた意見交換を行う。高点句の合評が終わったら、句稿の頭からZoom句会参加者の句を中心に選評を述べあう。無点句にも意見をもらう。Zoom句会に参加した方は自分の出した3句全部について点数に関わらず読者意見を聞くことができる。
 さて、今回の最高点は8点「蛇の衣」、忘却することで困難から抜け出すという心理的防衛機能を「非常口」に喩え、「蛇の衣」でイメージを具象化。採らない弁としては「非常口」が言い過ぎ、「忘却」と「非常口」が近過ぎ、「蛇の衣」が合わない。特に「蛇の衣」については様々な意見が出た。まだ情念が衣に残っているので忘却とは違う、捨て去った過去と理解、単なる抜け殻だ、等々。6点「氷菓食む」、「急用」なんかよりも「氷菓」の方が大事。一字空けで動きが見える。一行コントみたいだ。採らない人からは、面白いがよくある風景。同6点「短夜や」、あるある、「さらっと」が良い、と共感の声多数。逆に、これもよくある風景。「短夜や」がさらっと過ぎるとの声も。同6点「空蝉や」、今句会で最も白熱した句。採った人は絶賛、特に「空蝉」の働きが新しい。「空蝉」の中に「激し」いものがある、反響している、「空蝉」の世界観。一方で、厳しい現実世界の「空虚感」を「空蝉」にイメージさせるのは予定調和だ、との意見もあった。同6点「肉体も」、「ジュレ」が感覚的に分かる、「正気」は賛否あり。「になる」が気になるとの声も。同6点「老犬の」、「曲がり」ではなく「とがり」が良い。「明ける」に前向きな気持ち、老犬への労り。「て」は気になるとの声も。5点「あをあをと」、オノマトペ良し。蚊帳に水を感じとる感性、自然との一体感。蚊帳の香すら感じる。「嫉妬して」、自分の頭を冷やしているに違いない、面白がっている。一方、答えが出てしまっている、とも。
 今回もよくある日常の一齣をテーマにした句が多かったが、共感を呼ぶ一方で新鮮さに欠けるとの声もある。個人的には親近性と新奇性、その両方を孕んだ句を読みたいし詠みたい、そのための「表現」にもっと着目していきたい、と思った。(記:「海原」小松敦)

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