句会報:2024年6月「海原オンライン句会」

2024年6月は6/22(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:選句基準はありますか?あればそれはどんな基準ですか?あるいは、どんな句を選びますか?〈任意回答・順不同〉 結果はこちら


句会報:2024年6月「海原オンライン句会」

【高点句】(5点以上)

手の甲にメモするヘルパー半夏生 黒済泰子

わたくしの息継ぎをする金魚たち 男波弘志

自転車に大きな荷台昭和の日 矢野二十四

解体現場ぼうたんのあかるさよ 小西瞬夏

筒井呉服店ずっと休業つばくらめ 桂凜火

【参加者各一句】(高点句以外)

さくらんぼ歯に当て銃後という言葉 榎本祐子

営業マンの息つく処夏木立 塩野正春

月涼し足湯は八階テラスです 樽谷宗寛

ひとり喰む鮎の泪がほろ苦い 原洋一

花空木ときどき雲が目をあける 平田薫

無限大行ったり来たり夏祓 満葉

金盥の底に凹凸額の花 和緒玲子

不発弾のやうに母の目梅雨の星 安部拓朗

ほたる袋ときどき卑弥呼に逢いにゆく 石鎚優

ほっぺたに書かれた時計動いてる 葛城広光

案の定世間知らずの守宮です 木村寛伸

フェルメールの青になりたい夏の闇 さかいまゆみ

酢を注ぐピクルスの瓶若楓 菅原春み

ジャズピアノ緑の雨の向こう側 田中信克

モモタマナ人と野犬の午睡かな 田中怜子

バス停にオリーブの花不意にガザ 野口佐稔

雨の打つ代田剣山立つ如し 比良山

紫陽花のモコモコ湧いている不穏 伊東リハじ

蝮這う世界地図海の青色よ 井上べん

きっぱりと黒残す切り絵や心太 小田嶋美和子

星映すプールをゆるりソロ飛行 花舎薫

夏草やゴールポストの錆びしまま 坂川花蓮

夏至までを指折る鍵を受け取る日 紗藍愛

山繭やオーバードーズのきみの手に 夏谷胡桃

寅さんの店で食べたいかき氷 野口思づゑ

水無月の合わせ鏡に私かな 藤田敦子

ほうたるの灯りに思う故郷かな 二月結卯

兵役は戦機設計父の夏 石川まゆみ

心残りな夏よ秒針遅れ出す 大西健司

十五歳少女衛生兵に緑雨 大渕久幸

はつなつを尋ねる人の世界地図 小松敦

相棒の訃や「待つちよれよ」でででむし ながたにうたこ

風薫る道端に咲く花あまた 治子

神饌にパインの砲弾靖国社 姫

薫風や豪農館のハエ取りびん 坂内まんさく

   ◇

 今回は40名、うち初参加3名。「海原」以外からの参加者が約4割(15名)、初心者からベテランまで多彩な面々だが遠慮なく率直な合評が面白い。
 最高点10点「手の甲に」、介護世代が多いのか、日常の実感、多忙なヘルパーへの共感や労いの声多数。一方で「半夏生」に疑問の声も。上五中七のありふれた景を下後でどう引き立てるか。採った人の多くは片陰で咲く「半夏生」の健気、清楚なイメージとヘルパーの姿を重ねた。9点句「わたくしの」、「金魚」を対象として傍観するのではなく、自分が「金魚」になった人、一体化出来た人は採った。「息継ぎ」にはストレスや苦しみの感情を抱いた人が多かったが、ほっと一息する安堵感を覚えた人もいた。8点句「自転車に」、分かり過ぎ、付き過ぎ、下五で答えを出してしまっている、しかし、それでもいい、大きな荷台がリアルという人が採った。6点句「解体現場」、取り合わせが新鮮で印象的。石川県からの参加者は能登復興への前向きな「あかるさ」を見た。解体しないことには次のステップに進めないと。敢えて「あかるさ」と書く美意識だろうが、「火の奧に牡丹崩るるさまを見つ 楸邨」と比して、やや消化不良との声も。5点句「筒井呉服店」、店名がリアル。燕が居るなら「ずっと休業」であっても人の気配があるのだろう。衰退するものと永続する命の営みを具象化。「つ」の頭韻が心地よい。
 今回のアンケートでは「選句基準」を訊いたが、句会を終えて、次回はより具体的に「採らない基準」も訊いてみたいと思った。今、俳句で何を大事にしているのか、自分も含めて人それぞれの価値観を眺めてみたら何が見えてくるだろう。(記:「海原」小松敦)

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