12月は12/16(土)にZoom句会を実施。
今回も回答任意でアンケートを実施。
Q:あなたにとって「新しい俳句」とはどんな俳句ですか? 結果はこちら
句会報:2023年12月「海原オンライン句会」
【高点句】(5点以上)
手袋の人待つやうに置かれをり 小松敦
海鼠嚙む日和つてる奴いねえよな 柳生正名
ポインセチア睡眠薬の効かぬ部屋 あずお玲子
りんごシャリシャリあの時の嘘ごめん 三枝みずほ
床屋出て己の座標探す冬 佐藤詠子
雪催また調音を乞う楽器 中村晋
少しだけ未来を歩く寒月光 藤田敦子
冬林檎さびしいときに笑ふ人 宮下由美
寒紅を引きて女将の貌となる 矢野二十四
【参加者各一句】(高点句以外)
物価高サンタはトナカイ解雇して 満葉
医者に行く前に此処冬の日溜り 野口思づゑ
手押しの荷また積んでゆく師走かな 石川まゆみ
望郷や大根一本素ッ裸 石鎚優
小春とは豚の角煮のよいところ 大渕久幸
「もう行こう」「もうすこしだけ」木の葉ちる 小野こうふう
枯芙蓉朝が希望であった頃 妙子
袋詰め歳末大売り出し無言 田中信克
凍星やみんなが見てるジェノサイド 夏谷胡桃
一日中ジムにゐる老人(ひと)冬隣 坂内まんさく
なだらかに木は次の木へ十二月 平田薫
埋火や祖母の手のしわ指のふし 看做しみず
諍いのはじまり柿の種に刃当たる 榎本祐子
狼の足跡山に消えにけり 加瀬みづき
横顔の白く閉じられ冬の蝶 桂凜火
面構え真田昌幸枯蟷螂 後藤雅文
くらがりに母が捨てきし湯婆のゆ 小西瞬夏
すっぽん鍋竜宮行きはあきらめろ 樽谷宗寛
被爆者の友は辺野古へ冬の朝 野口佐稔
青・色・信・号・点・滅・冬夕焼 藤川宏樹
鉄棒に触るる跳躍月氷る 瑞穂
カトレアや海の記憶のこぼるる夜 安部拓朗
冬病棟あまたの管は翼得る 石橋いろり
宿帳に与太としたため寒鴉 木村寛伸
凩一号吾がスケルトンの隅々に 塩野正春
着ぶくれて人の溢れる場所に行く 菅原春み
寒椿一輪ホーと緩む頬 谷口道子
小さき幸空へ小春の観覧車 伊東リハじ
母親に全て委ねて眠る稚児 葛城広光
◇
今回も3名の初参加あり、少しずつ裾野が広がっているのを感じる。初参加で高点句もあり面白い。
38名114句。一人5句選。最高点は10点「手袋の」、手袋が誰をどんな状況で待っているのか、映画の映像構成を想起、主を待っている、暖冬の売り場で客待ち、落とし主を待っている、使い込まれて捨てられそう、等。読者の想像力を掻き立てたようだ。採らない弁は、手袋とはそういうもの、既視感あり、等。6点「海鼠嚙む」、二物衝撃が上手い。「いねえよな」が恫喝なのか同調を求めるのかによって「海鼠嚙む」の味わいが変化する面白さあり。「日和つてる」状況に深読みも可。某ドラマのセリフを思い出し素直に読めなかったとの声も。5点句「ポインセチア」、採らない人は「ポインセチア」と中七以降が繋がらぬの声。採った人の解釈は様々。ポインセチアの毒々しさに不眠感、イライラさせる人から貰ったポインセチアだから、「効かぬ」は「不要」の意、など選評が面白い。「りんごシャリシャリ」、軽やか、たぶん嘘も軽い。いい人間関係。シャリシャリしてる今こそが詫び時。もっと具体的にとの声も。「床屋出て」、心新たにリスタートする感じがうまく表現できている。「座標」が大袈裟か。「雪催」、弦楽器への愛着。「楽器」とは「自分」だとの解釈に対し、先ずは実景として読むべきだとの意見あり。「少しだけ」、前向きでいい。「寒月」でなく「寒月光」なのは「歩く」者の少しだけ前方に落ちる影をイメージしているのでは。企業スローガンみたい、とも。「冬林檎」、あるあるだけど「冬林檎」が効いていると思った人は採る。「寒紅を」、「寒紅」を「季題」とした一句一章の様式美の世界。また、高点句ではないが「狼の足跡山に消えにけり 加瀬みづき」は、薄味だけど味わい深い、兜太へのオマージュ、とのコメントあり。
(記:「海原」小松敦)